2014/12/17

カチンの「名字」

12月2日、カチン村の最初の夜。

ピーターさんとホームステイ先の主人がずっと話をしている。

彼は、日焼けした小柄なおじさんで、50代前半といったところ。この村に暮らして30年になる。彼の父親はイギリス植民地時代のビルマで兵隊をしていたとのことで、2年前にこの村で百余歳の人生を終えた。若き頃の兵隊姿の写真が飾ってあり、家の主にそっくりだ。

わたしは口を挟まず黙っていたが、せっかくだから主人の名前をと思って、ピーターさんに聞くと彼は知らないという。

二人が会ったとき、カチンの名字を互いに言っているのに気がついていたので、どうして知らないのか、と聞くと彼はこう答えた。

「カチン人はカチン人同士の自己紹介のさいには名字だけしか告げないのだ」

ちなみにピーターさんの名字はラバン、家の主人の名字はマリップ。

名字名字というが、実際には日本の名字とは違って、氏族名と言ったほうがいいかもしれない。複雑すぎてわたしには分からないが、カチン人はこの「名字」だけで相手からかなりの情報を得る。また、名字により結婚できる相手も決まっている。

ピーターさんが最近手に入れたというカチン語の本を見せてくれたのだが、カチンの名字に関するというその本によれば、カチンには少なくとも2337の名字があるとのこと。

ホームステイ先の猫