2014/12/07

『アボーション・ロード』第7章 地の獄の囚人たち(最終回)

わたしたちはココジーとミンゼヤーに感謝をして別れる。会議室のある二階から下に降りると相変わらず人でにぎわっている。広間に置かれた大きなテーブルでは、若い人たちが食事をしている。もう昼時だ。豚肉の料理、鶏肉の料理、魚のぶつ切りの料理。そのそれぞれを自分の皿のご飯に乗っけてスプーンで混ぜて食べる。さあさあ! どうぞ! わたしも招かれる。なんかお祝いみたいだ。ネーミョージンはどこかで誰かと話をしている。わたしはテーブルの端に座る。目の前にご飯が盛られた皿が置かれる。ええ、遠慮なんかしませんよ! がつがつ食い始める。もう夢中だ! すると、わたしより少し上ぐらいの男がやってきて隣に座る。いろいろ話しかけてくる。言っちゃ悪いが、わたしは食事中に話しかけられるのは好きじゃない。集中だ! しかし、彼はわたしの来訪をとても喜んでる。ガピという臭いのキツい塩辛調味料を掬ってひとかけするともっと喜ぶ。名前をコ・ジミーと言う。「今日はわたしの誕生日です! だからこうやってみんなにお昼を振る舞ってお祝いしているのです」 へえ! それはごちそうさま! だからこんな賑やかなんだ。で、彼はホストとしてもてなしてくれてるわけだ。ジミーは黒い服を着た女性を指す。「あれはわたしの妻です」 彼女は奥の方から食べ物を運んだり、客に話しかけたりしてる。「わたしたちは二人とも刑務所にいました」 ああ、ここにもまた元囚人が! 二人ともココジーと一緒に六十五年の刑を宣告され、まだ赤ん坊の娘と引き離されて夫婦一緒に投獄されたのだ。離ればなれの刑務所の中、顔を見ることも、声を聞くこともできない中で、二人はいったいどのように愛し合い、抱き合ったのだろうか?

(おしまい)

コ・ジミーと。

『アボーション・ロード』「第7章 地の獄の囚人たち」についてはまえがきを参照されたい。