2014/12/03

『アボーション・ロード』第7章 地の獄の囚人たち(6)

「そんなにも長い投獄を生き抜く苦労は並大抵のものじゃあないと思いますが、実際どのように凌いだのですか?」

「獄中の十八年のことを話すのはたっぷりと時間が必要だ。ハハハハ!」

政治囚ジョークだ。

「まあ、短く言えば、わたしたちは一日また一日と日を数えただけだ。わかるだろう?」

たっ例えば、刑務所の壁に爪でバツ印をいくつも付けるとか? そう聞きたい気持ちを抑えて、もう少し刑務所の中のことについて聞く。

「もっとも厳しいのは尋問の時期だ。刑務所に入る前のね」 伝えられるところではココジーも拷問されてる。「刑務所では日々の問題を解決していくことが必要だ。当局との問題を処理し、政治囚をまとめ、時には犯罪者とのトラブルを片付けなくてはならない。犯罪者の中にはとても乱暴で残忍な者もいるからね。しかし、なんにせよこれはナマの体験だった。さまざまに異なる人々とどのように関わるか、という。これはひとつの経験だ。当局と渡り合い、ともに生きるための交渉の技術のね」

「刑務所の中で社会を学んだ、というわけですね」 インタビューの名手のわたしならではの間の抜けたコメントだ。

「ほとんどは人間の心理学だね。同じ房の者との人間関係のね。ときには独房に入れられて孤独になるが、ときには二〜三人と同じ監房で暮らさざるをえない。それで、互いに忍耐強くなる。誰もが不満を抱えるし、動揺するし、鬱状態になるときもある。だから、お互いに励ましあう。お互いに楽しもうとする。こういう状況ではね……」

事務所に飾ってあった肖像

『アボーション・ロード』「第7章 地の獄の囚人たち」についてはまえがきを参照されたい。