2014/12/01

『アボーション・ロード』第7章 地の獄の囚人たち(1)

手紙にはニュースなんて書いてなくていい
あなたとの繋がりだけがあればいい
どれくらい刑務所の中にいるのか分からない
ここでは食べ物も、医療も十分でない
けれど、みんなにミンガラーバー
鉄格子の間からー
計り知れない悲しみと心労
外ではなにが起きているのだろう
懐かしき故郷の思い出
どうか、わたしを忘れないで
(「監獄の歌」作詞・歌唱 ネーミョージン)

二〇一三年二月一四日昼前、88ジェネレーション・ピース・アンド・オープン・ソサイエティの事務所、ネーミョージンと。それは二階建ての建物で、一階はだいたいホールと食堂、階段を上がれば会議室や事務室がいくつか。建物は水色、窓の枠は青、そして、もっとも著名なビルマの政治活動家たちが働くこの団体のマークが壁に。羽を広げた孔雀を正面から見た図だ。トゥミンガラー通りに面した鉄の門扉にもその簡略化された孔雀が、燃え盛る赤と萌えいずる緑で構成された円形の羽を誇らしげに開いていた。この門を入ると、建物を取り巻く広い空間が……おそらくヤンゴン東北部のティンガンジュン郡のこの辺りの土地にも、地価暴騰でぼろ儲けする連中がやがてむしゃぶりつくこったろう! だが、少なくとも今のところは、事務所入口の前に荷物を広げて作業したり、テントをしつらえて日陰でちょっとした仕事や打ち合わせをしたりすることもできるというわけだ。わたしたちがやってきたとき、ちょうど何人かが本を段ボール箱に詰めているところで、たぶんこの団体の刊行物かなんかとチラシ。かの有名な88ジェネレーションの活動家、ミンコーナインの顔が描かれてて。もっとも、彼はこのときヤンゴンの外にいて不在だった。事務所の入口には大きなデスクとホワイトボードが据えられてて、そこで人々が談笑してる。その横を通り過ぎ、大部屋に入る。たくさんのロンジー姿の人々がニコニコしながら出たり入ったりしてる。どういうわけかやけに華やいだ景色だ。


事務所の入り口

『アボーション・ロード』「第7章 地の獄の囚人たち」についてはまえがきを参照されたい。