2015/12/31

悲惨な戦い

難民認定申請者のうちには就労を禁じられている人もいる。しかし、難民認定審査のプロセスは何年もかかるから、その間、餓死しないために働く必要がある。

これは不法就労だが、日本の入管は黙認している。そしてこの黙認がいわゆる「偽装難民」増加の一因ともなっている。つまり「偽装難民」の問題は入管の無策によって生じているともいえるわけだが、それはさておき、この間、その「不法就労」をしている人が働いている居酒屋に飲みに行った。その人はBRSAの会員で、そこに勤めて長い。社長からの信頼も厚く、もうほとんど社長代理みたいに切り盛りしてる。独自に考案したメニューもある。

社長は相当年配の方だが、わたしがBRSAの会長であることを知っていて、どんなに店が忙しくても丁寧に挨拶してくれる。つまりそれくらいその会員は店にとって大切な人なのだ。

わたしたちが店に入った時は、いくつか空いた席があったが、焼き鳥、南蛮漬け、ほうれん草のピリ辛和えなどをビール、焼酎のお湯割によって次から次へと平らげている間に満席となっていた。もう誰もがやかましく酔いしれ、好き放題にサービス品やおすすめを注文している。にぎやかで居心地のいい店だ。

十分に飲み食いしたわたしたちは勘定を済ませ、席を立つ。店を出ようとするわたしに社長が頭を下げた。

「どうか」と件のBRSAの会員を指して「あの人が日本に居られるよう会で助けてやってください」

それは本当のところ簡単なことではないし、正直言って何をすれば良いのか見当もつかないことだが、重要なことだ。その会員にとっても、いや、そればかりではない、社長とその店にとってもだ。というのも、その会員を失うことは店の存続に関わる事柄だろうから。

わたしたちの会にはおそらくこうした人がたくさんいる。その貴重な働きによって、都内の居酒屋を支えている人々が。ならば、BRSAがそうした人々のために働くことは、これらの居酒屋のために働くことではないだろうか。さらに言えば、これらの居酒屋に集うすべての客のために働くことでもある。わたしたちの難民支援活動は酔客支援活動でもあるのだ。

吉田類やなぎら健壱はわれわれに一杯ぐらいおごってくれたっていいはずなのだ。

BRSAの会議では誰も飲まない。