2015/12/17

バマゾン・プロジェクト(5)

わたしがビルマに獄中の差し入れとして持ち込んだ書物のうち、一冊だけはその運命がすぐに明らかになった。

というのも、荷物をごちゃごちゃに詰めていたせいで、『オデュッセイア』だけ取り出すのを忘れてしまい、渡せなかったのである。

わたしはそれを日本に持ち帰った。10月のビルマ訪問はわたしにしては長い期間にわたったが、そうであっても約18日間の旅路ではオデュッセウスの帰還には短すぎよう。

この時の訪問では、やはり獄中にある政治活動家ネーミョージンさんにも会うことができたが、彼が英語の勉強のために歴史的なスピーチの本が欲しいと言っていたので、偉人による英語スピーチ集のペーパーバックを2冊買った。

そしてBRSAの会員の峯田史郎さんが、11月の総選挙の監視団の一員としてビルマに行くというので、その際に持っていってもらった。もちろん『オデュッセイア』を押し付けるのも忘れなかった。

そのうち書物は姿を変えてわたしのもとに戻ってきて報復を始めることだろうが、それはそれで楽しみだ。