2008/05/16

ある女性の証言(3)

大使館員らしき男性や女性職員を取り囲んだりしていたのは、それぞれのグループのリーダーたちで、それ以外のわたしたちは、ただ黙って並んでいました。

すると警察たちがやってきて、わたしたちを道路の邪魔にならないよう壁際に2列に並ばせました。わたしたちは何の抵抗もせず、警察のいう通りにしました。

しばらくすると、大使館前に警察の車がやってきました。機動隊の姿も見えました。マイクから退去するようにとアナウンスする声が聞こえました。車の上の台に何人かの男が立っていて、カメラやビデオでわたしたちの姿を撮影していました。

警察と機動隊員の数がどんどん増えてきて、緊張がじょじょに高まっていきました。ビルマ人の誰かが「みんな、手をつないで!」と呼びかけました。そして、警官と機動隊員が一斉にわたしたちに押し寄せてきました。

先に彼らがわたしたちを壁際に並ばせたことをお話ししましたが、わたしはこれは警官たちがわたしたちが通行人の邪魔にならないよう配慮してくれたのだと考えていました。ですが、それはわたしの勘違いだったと思います。警官たちはわたしたちを壁際に並ばせることでわたしたちの動きを封じたのでした。襲いかかってきた警官たちはわたしたちを壁に押し付けました。見ると壁と人に挟まれているのは女の子ばかりでした。妊娠中の女の子もいました。

「死んじゃう、死んじゃう」「つぶされる!」

みんなが悲鳴を上げていました。2列に並ばされたわたしたちに対し、4列の機動隊員たちが押してくるのです。なす術もありません。

警官と機動隊員たちは次々とビルマ人を排除していきました。3〜4人で1人のビルマ人をまるで人形のように抱えて連れ去っていくのです。

警官も機動隊員も鍛えられた人たちです。ビルマ人の中には日本人より大きな人もいますが、敵うわけはありません。ましてや女性など赤子も同然です。3人の警察が女性を抱えて運んで道路に放り投げていました。彼女は「痛い痛い」と泣き叫びます。それを見ていたビルマ人が「やめろ!」と駆けつけると、たちまち警官たちに取り押さえられてしまいました。

激しいもみ合いの中、わたしは1人の男性が、警官たちにむりやり列から引きはがされていくのも目撃しました。警官たちはその男の人を離れたところに連れて行くと、地面 に引き倒し、2人の警官がその上に馬乗りになって激しく殴っていました。5人ほどの警官たちがその周りを取り囲んで、見えないように隠していました。「死んじゃうよ、死 んじゃうよ!」わたしは叫びました。後から思えば、このとき殴られていた人が、逮捕された人なのかもしれません。

わたしたちの劣勢は明らかでした。みんな警官たちに向かって叫んでいました。「何で日本政府は軍事政権をかばうんだ!」

警官たちはものすごい形相で何か怒鳴り散らします。これにビルマ人側も激しく怒鳴りかえしました。

「同じ人間なのに、どうしてわたしたちだけこんな目に会わせるのか!」

「わたしたちには関係ない!」と警官たち。

「軍事政権がどれだけひどいことをしているかわかるでしょ!」

「関係ない!」「知らない!」

大使館前は凄まじい光景でした。わたしは日本に暮らして20年近くにもなりますが、まさか日本でこんなことが起きるとは思いませんでした。日本の警察がここまでするとは思いませんでした。