2012/09/08

引っかけ問題(2)

ゆえにこの質問は実質的には無意味なのだが、そればかりでなく弊害すら引き起こしてると思う。というのも、この質問は難民認定申請者にとってはこう解釈されることとなるのである。
「もちろん、わたしは第三国への渡航を希望しないと書くべきだ。なぜなら、もしそう書いたとしたら、入管はわたしのことを日本に住むことを希望しない人間だと 判断するに違いないから。そんな人間に入管がどうしてビザを与えよう? 入管はこうやって難民認定申請者の日本への忠誠心を試しているのだ」

これが本当にこの項目で入管が意図しているのことなのかは分からない。しかし、穿った見方をすれば、前のバージョンの問いでは明白に表現されてしまう「日本に滞在したい」という意思表示が入管にとっては不都合であるため、質問の仕方を変えたのではないかという気もしないではない。

つまり、「日本にいたいか」と聞かれて「いたいです」以外の答えをいう難民申請者は少ないが、「第三国への渡航を望むか」と聞かれて「望む」と答える申請者はかなり多いからだ。

それは、日本にいたいという希望とは矛盾しない。第三国への渡航を希望する難民の多くはたいていの場合次のような条件付きで望んでいるからだ。

「もしこのまま、日本で難民として認められず、いつ入管に収容されるかも分からない不安定な状況のまま生きざるをえないのなら、いっそのことわたしをどこか別の国に送ってください」

しかし、現行の問いではこのような思いは反映されない。ただ、第三国に行きたいか行きたくないかが問われるのである。そして、それが入管側にとって申請者が 「日本にいたくない」という意思表示として受け取られない、申請者の意志が歪曲されて難民審査において悪用されないという保証はまったくないのである。

実に巧妙なる引っかけ問題といえるであろう!