2011/06/11

悪人正機

ビルマ民族が民族平等の約束を忘れたため、現在のような危機的状況に陥ったビルマであるが、夫が妻の誕生日を忘れてもやはり同じような状況が待ち受けている。

わたしとしては自分の家庭に内戦も難民も生じないでほしいので、その埋め合わせに全力を尽くすことにした。

わたしはその日会う約束をしていた難民のAさんにキャンセルの電話をかける。Aさんは現在難民認定申請中の女性で、出るなり夫への不満をこぼしはじめた。先日夫婦で難民の口頭審査を受けたのだが、そのときの夫の受け答えが頼りなかった、というのだ。

わたしは夫のBさんもよく知っていて、頼りないどころか、むしろ誠実で信頼のおける人だと思っている。ただし頭の回転の速いAさんは、Bさんの慎重な態度にときどき苛つくこともあるのかもしれない。

それに、難民審査はいわば命のかかった場面だ。だから、ちょっとした言葉の間違いが自分たちの審査を台無しにしてしまうのではないかと、不安になったり、神経質になったりするのも当然といえば当然。

それはともかく、わたしは彼女の話を遮って、約束をキャンセルしなくてはならないことを告げる。

「妻の誕生日を忘れたのでダメなんです」

わたしたちはそれまで英語で話をしていたのだが、Aさんは急に日本語で嘆いた。

「ああ! あなたたち男はほんと悪い人だよ!」