2011/06/09

気持ち

入管の6階の仮放免のカウンターでの出来事。

年配の外国人男性が入管の職員と話している。どこの国の人かわからないが、わたしはクルド難民の人ではないかという印象を受けた。もっとも、国などどうでもよい。

男性の手には一時旅行許可申請書がある。これは仮放免中の人が、定められた居住地域以外の場所に行くときに、行く先、目的、期間を記して入管に申請しなくてはならないものだ。

入管の職員が申請書を見ながら言う。「あなた、がれきの処理だっていうけれど、泥だのなんだのいろいろあるんだから、病気にかかることもあるんだよ」

わたしはその口調が若干強すぎるように感じた。男性は小さな声で答えた。「いいんです。わたしの気持ちです」 

職員は申請書を受け取り、奧に入っていった。これはともかくも許可が出るということだ。

男性はじっと静かに待っている。

このような忍耐すら込みの彼の「気持ち」かと思うと、まったく見るに忍びない姿で。