2009/09/28

あやしい薬

10年ほど前の話。

カレン人の牧師が日本で暮らす信徒に会うために来日した。

日本暮らしの長いカレン人と一緒に池袋を歩いていると、警察に職務質問されそのまま警察署に連行された。

運が悪いことに、牧師はそのとき、精力剤のような薬を持っていた。その薬は名古屋で売っているもので、その地に住んでいたカレン人が牧師に贈ったものだった。

牧師にそんなに精力が必要か、という問題はさておき、牧師の所持品の中にこの薬を見つけた警察は、麻薬ではないかと疑ったのだった。

同行していたカレン人が警察に事情を説明し、晴れて釈放されるまで3時間かかったという。

この話で面白いのは、一緒にいたカレン人がいわゆる「不法滞在」の状態だったことだ。

警察がこの不法滞在者を見逃した理由はわからない。もしかしたら麻薬担当の捜査員で、不法滞在には関心がなかったのかもしれない。そうだとしても、いまならたちまち逮捕され、取り調べののち入管送りは免れない。

いずれにせよ、2003年10月17日の「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」以前の警察は不法滞在者に対して寛容だったことがこのエピソードばかりでなく他の証言からも知れる。

不法滞在者の増加というと、「不法に滞在する者」の責任ばかり問われるようだが、そのいっぽう、これらの人々を見逃し、利用し、放置してきた国の責任が滅多に問題にされることはないのはどういうことだろうか。