金正日ほど有名ではないがビルマの独裁政権のトップはタンシュエという軍人で、現在76歳という高齢。
あるビルマの人に、いずれ彼が死亡したらビルマの政治も変わるのではないか、と尋ねたらこんな答えが返ってきた。
「先生が死んだら、生徒が先生になるのです」
ところで、この「先生」という言葉、ビルマ人に限らず入管の収容者が、収容所の職員に呼びかける時に使う。「先生、お願いします」とか「先生、ちょっと待ってください」とかいうように。
収容経験のあるカチン人のひとりが「20代の職員が、先生だなんて呼ばれていい気になりやがって」と憤慨していたが、「触らぬ神に祟りなし」という収容者の圧倒的に弱い立場、あるいは「慇懃無礼」にも似た収容者のやり場のない怒りも読み取れる表現だ。
ビルマ語では「先生」を「サヤー」といい、名前の前につけて「〜〜先生」という表現を作る。この「サヤー(女性にはサヤマ)」に関して、田辺寿夫さんが「敬して遠ざける感じの目上の人によく使う」と書いていることも付け加えておこう(『それを言うとマウンターヤの言いすぎだ』p. 54)。