2009/04/08

「学生たちの準備はできている」

ヴィクター・ビアックリアン・インタビュー(2)

前回のインタビューの「軍事政権が2010年に予定している選挙を民主主義教育のための好機とする」という言葉についてさらに深くヴィクターに聞いた。

「具体的にどう教育するかというと、メディアをつうじて、あるいは民主主義と憲法に関するトレーニングを通じて、ということになります。

わたしたちはずっと以前からこれを行ってきました。チン人に対する教育経験をお話ししましょう。

わたしたちはチン州の憲法を起草する作業を続けていますが、その過程において同時に憲法についてチンの民衆を教育するということを行ってきました。軍事政権の憲法の弱点を分析し、また今後どのような政治システムが望ましいか、州政府はどのようなものであるべきかについて議論してきたのです。

2008年のチン民族記念日(東京)で歌を歌うヴィクター

このように民主主義に関して民衆を教育することは、何よりも有効なやり方といえます。SPDCの憲法の弱点、つまり民主主義と連邦制が保障されない点、それが軍事支配の強化につながる点など具体的に伝えることができるのですから。

わたしたちはインドでこうしたトレーニングを行い、参加者をビルマに送り返しています。これは危険ですが、不可能ではありません。」

しかし、国境近くのチンの民衆を教育することはできても、軍事政権の檻の中にいるヤンゴンやマンダレーの民衆を教育するのは至難の業では?

「非ビルマ民族地域ではわたしたちは長い活動の経験があります。ですが、ビルマ中央部となると確かに困難です。メソットに拠点を置くある組織が、ビルマ中央部の民衆に対する働きかけを行っていますが、どの程度効果が上がっているかはわかりません。

とはいえ、メディアの働きは重要です。もっとも、どれだけの人がそのメディアにアクセスしているかもわからないのが現状ですが。

ですが、チン州での経験に限っていえば、国内への働きかけは可能です。昨年の国民投票で反対票を呼びかけるキャンペーンも、規模は小さいもののチン州の一部では成功しました。

教育を受けた人々はビルマのどこにでもいます。そうした人々がカギを握ります。特に学生はしっかりしたネットワークを持っています。このネットワークの力を証明したのが、2007年のサフラン革命でした。

ビルマではいまなお、強固な学生運動の伝統が保持されているのです。学生はもっとも頼りになる存在です。たとえば、チン人の学生はあらゆる大学で学んでおり、民族文化、教会に関するサークルで活動しています。

また、わたしは国境のチンの若い活動家や国内外の学生のメールアドレスを500件持っています。必要な情報をすぐに伝え合うことができるのです。わたしが言えるのはチンの若者たちはいつでも働く準備ができている、ということです。」

〈ヴィクター・ビアックリアン略歴〉

ビルマ民主化と少数民族の権利のため、世界中で活躍する人権活動家、政治活動家。

1988年のビルマ民主化運動においてラングーン大学の学生指導者としてチン人学生を率いて活動。ビルマ政府による逮捕の後、インドに逃れ、UNHCRの再定住プログラムによりカナダに移住。

チン民族に対する深刻な人権侵害を国際社会に訴えるため、チン人権機構(Chin Human Rights Organization)を設立。またチン・フォーラム(Chin Forum)とチン民族評議会(Chin National Council)の設立にも携る。

さらに、ビルマ連邦国民和解プログラム(National Reconciliation Programme of the Union of Burma)とビルマ連邦少数民族協議会(Ethnic Nationalities Council)などのビルマ民主化政治組織においても活躍。

また、在日チン族協会(Chin National Community-Japan, CNC-Japan)の顧問を務め、たびたび来日している。