2009/03/11

アウンサンスーチーかアウン・サン・スー・チーか(3)

ビルマの非ビルマ民族の名前は二つに分けられる。

ビルマ民族と同じように姓がなく、その代わりに冠称があるタイプと、そうではなく姓をもつタイプだ。

前者の民族にはカレン人、シャン人、パラウン人、モン人、チン人などが含まれる。例えばカレン人は男性の場合はSAW、女性の場合はNAWという冠称が用いられる。

とはいえ、これはスゴー・カレン人の場合で、ポー・カレン人ではMAHN(男性)、NANG(女性)である。

チン人のうちティディムのチン人はTHANG(男性)、LIA(女性)という冠称を用いている。あるチン人の女性のパスポートでの名前にMA LIA MANG XXXXというのがあったが、この最初のMAはビルマ語の冠称、次のLIAはチンのそれというわけで、冠称が2重になっている。

本来ならば、LIAのみで済ましたいところを、パスポート申請の際に若い女性だからということでMAをつけられた、あるいはつけるように強制させられたというところであろう。民族的な差異に関してビルマ行政がいかにこれを尊重せず、ビルマ民族の流儀を他民族に押し付けているかの一例である。

また話は脱線するが、非ビルマ民族のうちで若い頃に日本に来た男性に、しばしばMAUNGなにがしという名前がある。このマウンというのは若い男性につけられる冠称なのは前述のとおりであり、ビルマ民族の男性にはついていて何の不思議もないものだ。

そのようなわけで、例えば20代でパスポートを取得した非ビルマ民族男性にも、さきのビルマ政府の流儀によって不当にも、その民族の冠称や姓の代わりにこのマウンが適用されることになる。しかし、当人にとってはそもそも不本意な話である上に、日本滞在も長くなってマウンとは言えない年齢になると、さらにこのマウンが気になってくる。

しかも難民認定申請や認定後の生活はパスポートに記載された名前で行われるわけで、必要書類を揃えて役所に届け出て変更しないかぎり、このマウンと場合によっては一生付き合わなければならないはめになる。

「本当にこのマウンはいやで、取ってしまいたいんですけどね。どうも名前までビルマ人にバカにされているみたいで」とはあるカチン人の言葉である。

些細なことかもしれないが、こうした非ビルマ民族の気持ちを理解しているビルマ民族は、日本で難民認定された政治活動家のなかでもほとんどいない。ここにビルマ民主化と民族問題の解決の難しさがある。