ビルマ人の名前の表記でしばしば問題になるのは、「アウンサンスーチー」か「アウン・サン・スー・チー」のどちらか、つまり、名前の区切りごとに中黒(・)を入れるべきかどうかということだ。
きちんと調べたわけではないが、ビルマ問題の専門家が書いたものでは中黒を入れないものが多く、新聞などではいちいち区切っているものが多い。
どちらでもいいと言えばいいことなのだが、その双方に一長一短のあることを記す。
中黒を入れる表記法の長所は、その名前がどのような要素からなり、またどこで切れるかが分かることだ。
例えば次のような名前の場合、ビルマの名前についてある程度の知識がなければどこで区切るかは普通は分からない。
キンマウントゥン
これはローマ字つづりKhin Maung Tunを見れば分かるように、「キンマ・ウン・トゥン」でも「キン・マウントゥン」でもなく「キン・マウン・トゥン」と区切るのが正しい。
中黒を入れる表記法は、このようにビルマ語の知識がない人に名前の区切りを示す意味で有効であるが、この名前の区切りの知識が、そうした人にとってどの程度役に立つのかを考えると、たいして役に立たないような気がする。ただし、声に出して読む場合は、どこで区切りがあるかの情報は重要であることは確かだ。
さて、それではこの中黒法の短所はどうかというと、まず第一に煩雑だと言うことである。第2に、ビルマ人の名前を書くさいに、書き手はあらかじめその人名の語の区切りというやや高度な情報を知っていなくてはならず、その情報は常に誰でも把握可能ではないことが挙げられる。
つまり、ビルマ文字が読めるか、その名前のローマ字表記資料が手元にあるか、それとも名前を聞いただけで、区切りが分かるだけのビルマ語知識を持っているかでなくてはならず、これはいつでも誰でもできるといった条件ではないのである。
そこで、次回は中黒を用いない名前表記の方法、いわば非中黒法の長所短所を記すことにする。