2012/05/18

ビルマのカレン民族とカレン民族同盟(7)

(カレン民族同盟(KNU)副議長のデヴィッド・ターカーボウ氏とローランド・ワトソン氏共著のTHE KAREN PEOPLE OF BURMA  AND THE KAREN NATIONAL UNIONの全訳の7回目。)

3.カレン民族の政治組織
カレン民族同盟(KNU)

KNUは、ビルマがイギリスから独立して以来、カレン人のための確固とした政治組織として活動してきた。さらに、KNUは本来的に民主的な組織である、というのもその中核に、つねに村に根ざした選出組織があるからである。それぞれの村で村会と村長が選出される(村における最初の選挙は、イギリス支配期に行われた。それ以前には村は長老によって治められていた)。村長は実際非常に難しい地位である。というのも、彼もしくは彼女(女性が村長の村は数多い)は、 SPDCの要求、たとえば強制労働の要求に応じなくてはならず、つねに民主化運動を支持していると責められるからである。村長はしばしば投獄され、拷問をうけ、殺される。

10から20の村がひとつにまとめられて、「村落」をなす。村会は、委員長、副委員長、事務長などの村落委員会委員を選出する。この手続きは、9から10の村落からなる郡レベルでも繰り返される。郡においても、そのすべての郡に、情報省、健康省、教育省、農業省、森林省のKNU職員がいる。他の省は、必要に応じて特定の郡に置かれている。

郡は最終的に、カレン州内の7つの地区に組織される。それぞれの地区には選挙による委員会があり、それには議長、副議長、事務長、各省の地区職員がいる。

7つの地区のビルマ語とカレン語の名称と、そこに関連するカレン民族解放軍の旅団は以下のとおりである。

タトン ドゥータトゥー 第1旅団
タウングー トーウー 第2旅団
ニャウンレビン クレールィートゥ 第3旅団
メルギ・タヴォイ ブレータウェ 第4旅団
パプン パプ 第5旅団
コウカレイッ ドゥープラヤ 第6旅団
パアン パアン 第7旅団

KNUの日々の活動は、執行委員会によって運営されている。この委員会は11名のメンバーからなるが、現在は9つの役職だけが充当されている。

・議長(大統領)
・副議長(副大統領)および防衛大臣、防衛省
・事務総長(首相に相当)
・副事務総長1、組織省
・副事務総長2、情報省
・KNLA長官および総司令官
・副長官、森林鉱山省
・外務省長官
・救援復興省長官
・運輸交通省長官(在職中に死去)
・同盟省長官(現在空席)

執行委員会は基本的に週一回開かれる。すべての省の報告が事務総長に直接なされる。防衛省報告もこれに含まれる。他の民主主義国家と同じく、防衛軍は執行事務局の命令下にある。KNLAはカレン人の抵抗運動の一翼を担う軍事組織であり、KNUに全面的に従属している。

KNUには15の省庁がある。外務省を除くすべての省は地区レベルにまで支庁(時には郡レベルにまでも)がある。ほとんどの省では、予算の制限により、中央部の職員の規模は非常に小さく、1~2人の職員に1~2人の補佐がいるのみである。たとえば情報省は、人権侵害や紛争などの報告を含むKNUのウェブサイトを 2年にわたり運営していたが、この活動は、ウェブ管理者に支払ったり、サーバーを借りたりする資金の不足のため、中断されることとなった。

KNUの省は以下の通り。

農業省
同盟省
防衛省
教育省
財務と税務省
外務省
森林省
健康省
情報省
内務省
法務省
鉱山省
組織省
救援復興省
輸送交通省

以前は、漁業省と畜産省もあった。

健康省、教育省、森林省、農業省は最も規模の大きい省である。健康省に含まれるのは、看護婦、衛生兵、何人かの医師のいる地区健康省と、地区診療所、さらに移動診療所と難民キャンプ診療所である。教育省はいくつかの高校と、難民キャンプ内の小学校と大規模な国内避難民地域で小学校を運営している。森林省は事実上最も大きい省であるがそれは、各地区に森林警備員を置いているからである。かつては、かなりの材木が収入のために伐採されたが、現在では減少している。KNUはカレン州に残る森林を保存しようと努めている(われわれは3つの地区で熱帯雨林の保護地域を設けている。そこでは伐採と狩猟が禁止されている が、タイ人が保護地区にひそかに入り、木を伐り、密猟を行っている)。

組織省はKNUの会員の増大に努めている。どのようなカレンの個人もKNUにはいることができ、年会費も非常に低い。組織省は、またカレン女性機構とカレン青年機構の後援も行っている。

情報省は、人権侵害、紛争、経済・政治問題についての報告を公にすることで、SPDCによる情報隠蔽に対抗しようとしている。カレン情報センター(「民主主義のための国民基金」によって資金援助されている)を通じて、ニュースレターを発行している。

法務省に関して言えば、刑法と市民法において使われている法的枠組みはイギリス法を基本にしている。それぞれの郡と地区、そしてカレン州全体に、高度に組織された法廷と裁判官を置いている。最終控訴は恩赦の権限を持つ大統領に対してなされる。われわれはまた多くの拘留施設を運営している。内務省にはカレン警察と村落警備隊が含まれる。

われわれはコトゥーレイ州憲法草案を準備している(その前文はすでに第1章に掲げた)。これは現在執行委員会において第1次審議が行われている。これが済むと、おのおのの地区とカレン人諸組織に配布されて、意見を求めることになっている。憲法はビルマの新しい連邦憲法に合うように作成されている(カレン人代表が、連邦憲法草案委員会に加わっている)。カレン州の憲法の準備はカナダの国民和解プログラムからの援助によって可能となった。

KNUにはまた、30人の正式委員と15人の委員候補を含む45人のメンバーからなる中央委員会がある。中央委員会は年に一度行われ、事実的には議会の機能を果たしている。すべての重要な問題が議論され、必要に応じて投票が行われる。

4年に一度、KNU大会が最低3週間の期間で開催される。その間、大統領と副大統領を含む選挙か行われる。KNUのすべての地区の代表は、大会への参加、候補の推薦、選挙での投票を許可されている。全体で1,000人のKNU職員がおり、60,000人のメンバーがいる(KNUのメンバーとして受け入れられ ているKNLAの兵士たちも含む)。