ビルマ問題について何冊も重要な著作を発表しているジャーナリスト、バーティル・リントナーが、この前来日したとき、こんなことを言っていた。
「ビルマ軍事政権が崩壊するとき、かつてルーマニアのチャウシェスク大統領に起きたような報復行為が、軍事政権高官に対して民衆の側から起こるかもしれない。この復讐を止めさせることができるのは、ただアウンサンスーチーだけだ」
それができるのが本当にアウンサンスーチーさんだけなのか、そしてたとえそうだとしてもそれでいいのか、という点はどうだかわからないが、軍事政権が頑として権力を手放そうとしないのは、抑圧されていた人々からの残虐な報復を怖れてである、というのはよく聞く意見だ。
それどころか、政治活動家の中にはそうした態度をあからさまにする人もいる(滅多にいないが)。
ある在日カレン人の活動家が「あいつら絶対殺してやるよ」と口走ったのを覚えている。「あいつら」というのは彼の暮らしていたヤンゴンのある地区の政府関係者のことである。
今日、あるビルマ人と話していて、彼が「政府は報復が恐ろしいので、絶対に権力を渡さない」というので、ぼくはこんなことを言った。
「もしも政府が変わったら、今日本にいる難民がビルマに帰るかわりに、軍事政権高官たちが日本にやってきて難民申請するかもね」
彼は笑って付け加えた。
「そしたら、成田で捕まえて牛久の入管収容所に送るのではなく、そのまま刑務所に入れてください」