軍事政権がこのまま2010年の選挙を実行するのならば、われわれは再び武器を持って立ち上がるだろう、とは現在停戦中のモン民族のある指導者の言葉。これと同じ意見の非ビルマ民族は多い。
カチン人の武装勢力はすでに2万人の兵力を集め、国境で静かにその時を待っているという。
しかし、さらなる戦争はいかなる角度から見ても状況を好転させはしない。
軍事力の点から見れば、非ビルマ民族の軍がいかに束になってかかろうとも、ビルマ軍を打ち倒すのは至難の業だ。せいぜい悲惨なこう着状態に持ち込むのが関の山だろう。
また戦争が拡大すれば、多くの民間人、子どもが死ぬ。ビルマ政府は非ビルマ民族の絶滅を目論んでいるとよくいわれるが、戦争はそれをかえって加速させるに過ぎない。
さらに、戦争は、非ビルマ民族を国際的にさらに孤立させるであろう。戦争地域で人道支援を行ったり、報道活動を行うのは非常に困難であるし、そもそも武装勢力に協力したいと考える国際機関やNGOはまずないだろう。そして、国際社会の態度の変化は、世界中の非ビルマ民族難民の立場に大きな影響を与えるに違いない。
戦争を目論む人々にはこう考える人々がいる。ビルマ国内での戦争が、アジアの平和を脅かすほどにまで拡大すれば、きっとアメリカが黙っていないに違いない、イラクのようにとまではいわないが、強力な介入を行うに違いない、というのだ。
だが、強国の支援を呼び込むためには、多くの普通の人々の命を犠牲にしてもかまわない、と考えるのは思い上がりだ。他者の命を人質に支援を当てにする北朝鮮の行動様式と、さして変わるところはないのである。