3年前にタイ・ビルマ国境に行ったとき、カレン人国内避難民の支援をしているカレン人活動家から、小型の望遠鏡を日本から送ってくれないかと頼まれた。詳しく聞いてみると、銃に付けるスコープのようだ。
彼が言うには、ビルマ軍部隊というのは有象無象の集まりなので、隊長さえ狙撃してしまえば、一気に崩壊してしまうのだそうだ。
部隊を瞬く間に潰走させ、カレンの村人たちを守る。質の良いスコープさえあれば銃弾一発でこれが可能なのだという。
その後、国境からバンコクに戻り、ハイテク製品デパート、パンティップ・プラザに行った。すると、ある店舗で、照準器を扱っているではないか。
ぼくはガラスケース越しにさまざまな太さ・長さのスコープを見つめた。暗視装置の付いたものもある。女性の店員がガラスケースからスコープを取り出し、目 の前に並べてみせた。手に取って、ファインダーを一応覗いてみたりした。
値段を聞くと、高いことは高かったが、買えない値段ではなかった(正確な値段は忘れてしまった)。
ぼくは自分が寄付したスコープでビルマ軍の隊長が射殺される様子をしばらく思い描き、結局何も買わずにその店を後にした。