現在、ビルマ軍と民主カレン仏教徒軍(DKBA)の大攻勢にさらされ、第7旅団基地という重要拠点を奪われたカレン民族同盟(KNU)だが、ある非ビルマ民族政治家によれば、これはけっして敗北とはいえない、とのこと。その理由は次の3点だ。
1)カレン軍は何も失っていないに等しい。
たしかに第7旅団支配地域は重要だが、実際にあるのはジャングルばかりで、失ったところでたいしたダメージはない。いっぽう、戦わずして退却することによって、KNU側は兵力を温存できる(陣地は後で回復することもできようが、兵はそうはいかない)。
2)退却自体が敵に不利である。
敵軍はカレン軍を追求するが、ジャングルでの移動にかけてはカレン人のほうが何枚も上手だ。ジャングルを堂々巡りしているうちに消耗するのはビルマ軍側ばかりなのである。
3)ゲリラ戦法への転換。
敵軍がかつての領域内に入り込んできたことにより、カレン軍はもっとも得意な作戦、つまりゲリラ戦に持ち込むできる。
なお、同様な記事をDVBが報じているのでリンクを以下に掲載しよう。
1)Loss of Karen bases a ‘strategic’ move by KNU
2)Karen armed group to fight ‘with guerilla warfare’
確かにそうかもしれない。だが、これが次に述べる2つの巨大な損失を補うものかどうかはわからない。
1)今回の侵攻により、膨大なカレン人難民が発生している(上の1によれば8万人)。
2)第7旅団の支配地域にあったボーミャ将軍の墓が奪われたという事実が世界中のカレン人に与える精神的ダメージ。
カレン人が英雄の遺体をビルマ政府に奪われるのはこれが最初ではない。1950年、ビルマ軍はKNUの創立者ソウ・バウジーを殺害すると、カレン人の崇拝の対象とならないように、その遺体を海に投げ捨てた、という。ビルマ政府がボーミャの遺体に同じことをしないと誰が言い切れるだろうか。