2009/07/10

写真は恐怖を写し出す(2)

写真をバシャバシャ撮っている人の中には、それぞれの政治団体の記録部の人や、在日ビルマ人ジャーナリストがいる。これらの人が撮った写真は、インターネットのウェブサイトや雑誌に掲載され、世界中の人々(その中にはビルマ軍事政権も含まれる)の目に触れることとなる。

このような写真の中に自分の姿が写っている人は、結果として自分の難民性を証明するもう一つの理由を手に入れる。つまり、その人は、入管の難民審査官に対して、次にように主張するのだ。自分の政治活動をしている姿がインターネット上に流布しており、軍事政権がそれをチェックしている可能性が極めて高い。ゆえに、軍事政権に逮捕される恐れがあり、わたしはビルマに帰ることができません、と。

軍事政権がそんな写真までチェックしているはずがない、と思う人もいるかもしれない。また、チェックしていたとしても、その写真に写った人を特定することなどできるのか、と疑問に思う人もいるだろう。だが、軍事政権にとって写真は政治活動家を逮捕するための重要な手段であることを考えれば、まんざら否定はできない。

軍事政権は反政府デモが起きると、必ず何枚も写真を撮り、後日その写真を元に聞き込みを行い、デモ参加者を特定するのである。次はあるカレン人女性の証言で、1988年の民主化運動の後、軍が権力を握った日の出来事だ。

軍事クーデターの起きた日、人々がわたしの家の前の通りに集まって不満をいい、騒いでいました。そのとき、こちらに軍情報部の車がやってきたので、みんなは退散しました。わたしも逃げて家へと戻りましたが、すぐには家にはあがらず、門のそばに立ってことの成り行きを見ていました。すると、3人の軍情報部員がわたしのところにやってきました。彼らは、手に持っている写真を見せました。それはデモの写真で、そこに写っているわたしを指差して、「これはお前だろう」と聞きました。わたしは怯えながら、はいと答えました。彼らはわたしの家はどこかと尋ねました。わたしはどうしても嘘をつくことが出来ず、自分の家を指差しました。すると彼らは即座にわたしを引っ立てて、家に押し入り、捜索を始めました。

これは何も特別な経験ではない。デモの時に撮られた写真によって、当局から尋問されたり、脅かされたり、逮捕されたりした経験を持つ人は多い。