2010/12/13

やりくり

難民申請中のビルマ人Aさんが、ある事情から急に引っ越ししなくてはならなくなった。

仮放免の身なので、なかなか新居が見つからない。そこで、すでに在留許可を得た友人のBさんの名前で借りることにした。

問題はお金だ。家探しに時間がかかったこと、そしてまぎれもなく本人がぐずぐずしていたため、契約を成立させるには、翌日までに11万円払わなくてはならない、さもなければ住むところを失う、そんな状況だった。

そこで、Bさんがぼくに電話をかけてきた。とりあえず立て替えて銀行から送金してくれないか、と。

「で、その人は今いくら持ってんの」

電話口で彼がAさんと話しているのが聞こえる。

「5万円だって」

6万円貸すわけか、とぼくは考える。ぼくはビルマの人々に貸したまま返ってこないお金のことを思う。総額18万。そのうち5万円と6万円を貸した二人のカレンの人は、ぼくのことをスパイだなんだとさんざん触れ回っている。そうすれば借金も帳消しになるかも、という短期的かつ楽観的な経済見通しがあるのだろう。もっとも、こちらは長期的かつ悲観的に考えるほうだ。

それはともかく、Bさんは信頼のできる人だ。それに、損害を被るとしたらBさんのほうがはるかに大きい。なにしろ、彼はAさんの家賃の責任も負わなければならないのだから。

また、ぼくはAさんのことも知らないではなかった。独立して生計を立てている人だ。そんなわけでぼくは踏み倒される可能性は低いと判断し、11万円を送金し、そのうちの6万円を貸すことにした。

もっとも、送金を済ませたぼくはすぐにBさん電話して、こう要求せずにはおれなかった。

「その5万円をすぐにAさんから奪い取るんだ!」

それからしばらくして、ある日本人と話すことがあった。いろいろとビルマ難民の面倒を見ている人だ。たまたまAさんの話題が出た。その人が言った。「Aさんなら、この前電話をかけてきて、引っ越しでどうしてもすぐにお金が必要だからというから、貸したよ、5万円!」

もう爆笑ですよ。