2010/05/08

猫の手と難民(3)

第2の説は、このリアクション説に立つものである。つまり、入国管理局は、根っからの自民党支持者で固められており、民主党という政党が政権についたら、とんでもない人権侵害が行われるぞ、ということを示すために、難民をいじめているのだという。

こ れは馬鹿げているし、そもそも矛盾している。入国管理局(そして保守派の政治家)にとっての悪とは、外国人が日本で自由に(そして楽しげに)行動すること だ。だから、難民をはじめとする外国人に対して悪待遇を強いるのは、これらの人々にとっての善であり喜びなのであり、こうした素晴らしく善いことを、民主 党政権下で行うのは、敵を利することに他ならないのである。

だから、民主党が政権を取ったらとんでもないことになるということを、入管が 示そうとした場合、それはむしろ、収容所をカラにし、取り締まりを緩め、入国を管理しないという入国管理業務放棄の方向に向かうはずである。つまり、民主 党政権下では外国人は「野放しになる」といいうことを示そうとするはずなのである。

それに、第一、入国管理局、というか官僚がいくら自民党を支持していたとしても、そこまで自民党にべったりだとは考えられない。それは、われわれが日本の官僚の問題点として耳にしている話とは大いに異なるのである。

その話とは官僚による政治の誘導であり、またあらゆる巨大組織が持つ弊害である無目的な自己保身への欲求であるが、いわばこうした官僚中心主義の土壌で、上記のような政治的判断が生まれるとは考えられない。

むしろ、この官僚中心主義こそ、今回の方針悪化の根本原因ではなかろうか?

つまり、この方針転換は入国管理局が新たな政権に対して、自分たちのやっていることは税金の無駄遣いではないということをアピールするためのものではないかと思うのである。

だからこそ、収容所はいつも満員でなくてはならない。それどころか、なんなら足りないぐらいだ、という雰囲気も出したい。なにしろ、仕分けされてはかなわないからね、というわけだ。

忙しい人は猫の手でも借りたい。入国管理局は難民の命を収容期間だけきっかりお借りして、政権交代という未曾有の事態をしのごうとしているのである。