2013/06/21

あいのりタクシーブルース

牛久駅から東日本入国管理センターまではバスで行くことができるが,2時間に1本もない。

そんなわけでタクシーで行くのが一番便利だ。ただし,片道2,500円は覚悟しなくてはならない。

最近は在日ビルマ難民たすけあいの会(BRSA)の仕事で行くことが多いので,タクシーを使わせてもらうが,以前はバスの時間に合わせて面会に行っていたものだった。

行きはいい。しかし問題は帰りだ。バスはそう都合よく来ないから,相当待たなくてはならない。やがて暗くなる。しかもかなりの田舎だ。明かりなんかない。人っ子ひとりいない。鬼太郎夜話! 心細いことこの上ない。金があるならタクシーに限る。

牛久駅と入管までの道筋はいくつかある。どれも大して変わらないように思うが,それでも一番近い道があり,これは林の中の狭い道を通る。しかし,ある運転手によれば,この道は事故が多いので通らないようにと言われているそうだ。

何年も前のことだが,面会を終えたわたしは入国管理センターから電話でタクシーを呼んだ。しばらくすると入管の玄関に配車。

わたしが乗ろうとすると,男の人が声をかけてきた。駅まで同乗させてくれというのだ。むろんのこと,タクシー代は割り勘だ。これはわたしにとっても助かる。

さっそくタクシーはわたしたちを乗せて出発した。その男の人は結構こわもて,で身体も大きい。面会に来ていたのだという。「ハッハー助かりました!」 大きな声で上機嫌だ。入管が遠い! と文句をいう。「まったくです」とわたし。一仕事終えて2人ともほっとしてる。

だが道のりを半分ほど過ぎた頃だ,この男が急に怒り出した。道が違う! 「ふざけんなこのやろう!」 運転手に怒鳴る,罵る。後ろから首を絞めんばかりだ。運転手は「あの道は通っちゃいけないんです」とか弁明するが,やっこさん,聞いちゃいない。真っ赤な顔で怒ってる。絶対金なんか払わねーぞ!

とんだあいのり! 俺が呼んだタクシーでおっぱじめんなよおい! この理不尽な出来事にわたしもだんだん腹が立ってきた。

「すいません!」 わたしはタクシーの運転手に言った。「もうここで止めてください! ここで降りますから!」 俺は歩く! 

と,男は我に返る。わたしに謝る。で黙りこくる。運転手に「ぼろうとした分は絶対払わねえからな!」と言ったきり。

駅に着く。男は自分が払いたい分だけ払って車を飛び出した。で,足りない分を支払ったのはこのわたしだ。