チンの若い人を乗せて運転する機会があった。
助手席に座った彼は、こんな話をした。
「ビルマにいた頃、あるドライバーが『車ってのは、全身で運転するものだ』と言ったのを思い出します。その人がいうには、手はハンドル、足はアクセルとブレーキ、目は道路を見て、耳で周囲の音を聞く・・・」
ぼくがハンドルを握りながら、「さすがに鼻はないだろう」と思っていると、彼は付け加えた。
「鼻はエンジンや車内の臭いから、調子の良し悪しを判断するのです」
なるほど、ビルマの町を走る車のほとんどは、日本でなら廃車になっていそうなものばかり。そうした車とうまく付き合うには、確かに五感を研ぎ澄まさねばならないのだ。