2008/06/18

不吉な夢

カレン民族同盟(KNU)は、ビルマ人の圧政からカレン人を解放するために、半世紀以上もの長きにわたり歴代のビルマ政府と戦ってきた。盛時の勢いはないとはいえ、現在もタイ・ビルマ国境のカレン人居住地域で一定の勢力を保っている。

そのKNUのある中堅幹部が夢を見た。

キリスト教徒である彼は、毎週教会に行き、礼拝に出席してきたが、今日だけはどうしても行く気がしない。なんとなく不安を感じるが、妻がせき立てるので、行かざるをえない。

教会に着くと、まだ礼拝のはじまる前。そうだ、賛美歌の練習をしなくてはならない、と彼はピアノの前に座り、演奏する。

信徒たちはそれにあわせて歌を歌うが、その中に見知らぬカレン人がいる。よそ者はカメラを持っていて、彼の写真を撮り、また携帯電話で何かを話している。

妙に気になる。そして、彼は急に恐ろしくなる。すると、ヤクザのようななりをした巨漢のタイ人がバイクで教会に乗り付け、駆け込んでくる。

どうしてだかわからないが、彼は不意に悟る。そのタイ人が自分を射殺しようとしていることを。彼は席を立って、別のところに移ろうとする。

だが、タイ人は彼めがけて走ってくる・・・

今年の2月14日、KNUの実質的なNo.1であったパドー・マンシャ事務総長が敵対するカレン人によって射殺された。中堅幹部が見た夢に、この2月の暗殺事件を読み取るのは容易である。だが、どうしてタイ人が暗殺者として登場するのかはわからない。

もっとも、夢解きが主題なのではない。この夢に横溢する恐怖こそ、この記録の主眼である。

その恐怖は、ニュースにもならず、それゆえ理解されることもあまりないが、軍事政権のスパイと刺客が跋扈し、無法行為が横行する現在のタイ・ビルマ国境で暮らすカレン人政治活動家たちが、程度の違いこそあれ日々感じているものなのである。