2010/11/16

虫けらどもをひねりつぶせ(4)

後から聞いたのですが、BRSAの会長の大瀧妙子さんもすでにお話をしていたそうです。また、後でビルマ市民フォーラムの代表として宮澤さんがお話ししているのも聞きました。デモに協力しているビルマの団体や日本の団体の代表がひとりひとり短い演説をするのが決まりになっていたのです。

もちろんそうした決まりがあるのは知っていましたが、それがこのタイミングで自分に降り掛かってくるとは思いもよりませんでした。ぼくは自分が卒倒しなかったのが不思議なくらいです。ぼくは書くのもダメですが、しゃべるのはそれに輪をかけてダメという手合いで、話し始めるや聞き手よりも先に自分の頭が朦朧としてくることしばしばです。カエルと一緒で口を開くのは食べるときだけです。

いきなり引きずり出されたぼくは「5分だけ待ってくれ」とノートを持った彼に懇願しました。どこからこの5分という数字を自分が引っぱり出してきたのか、いまだに分かりません。多分、5分あれば近くの公園にまで逃げられると思っていたのでしょう。

それはともかく、ぼくはサンダータウンさんとモーチョーソーさんのところに駆け戻り、何を話せばいいのか尋ねました。「総選挙に反対するということだ」という答えが返ってきました。慌ててぼくはメモ帳を取り出し、「選挙反対」と殴り書きしました。このメモを片手にぼくはあの「演説台」に戻ったのですが、まあ、貴重な5分間と紙一枚を無駄にしたわけです。

そもそも『虫けら』なんて読んでいたのがいけなかったのです。そんなものにうつつを抜かしている暇があったら、ネットで仕込んだビルマの最新情勢とか、人権守れ!の記事とか、民主主義育て!の論とか、民衆が今!のニュースとか、誰に見せても恥ずかしくないようなものを読んでいるべきだったのです。もっともたとえそうしたとしても、なにしろ読みつけてないので、ボロを出すこと必定ですが、しかし少なくとも頭はきっと前向きになっていたことでしょう。土の中から引きずり出されたモグラのようにぶるぶる怯えることはなかったでしょう。日頃の行いの罰が当たったのです。虫けらはひねりつぶされました。

でも、今さらそんなことを嘆いてもはじまりません。すでにぼくは「演説台」のところに立っているのです。ノートの彼に「通訳はありますか」とぼくは聞きました。すると「ない」との答え。彼はビルマ語で大声で紹介をし、ぼくは日本語で話しはじめました。