2010/06/04

退会届

BRSAの会員が亡くなったので、前年度の事務局長のウ・テインリン(U Thein Lin)さんと葬儀に行った。

斎場に運ばれる前の棺は小さな霊安室に置かれていて、遺族とビルマのお坊さんがその部屋にぎゅうぎゅう詰めになっていた。

ぼくとウ・テインリンさんとほかの参列者たちは入り口にたむろして、遺族たちの唱和するお経を聞いたり、雑談したりしていた。

30分ばかりの儀式が終わりに近づいた頃、ウ・テインリンさんがふところから封筒を出した。中には手書きの手紙が入っている。それは何か、と聞くと彼は

「この人は亡くなったので、退会届を持ってきたのです」

と答えた。いくらBRSAの会員だからといってそんな形式的で、遺族感情を逆なでするようなことをここですることはないだろうと、ぼくは、ビルマの人々が時おり妙に官僚主義的な振る舞いをするのを思い出しながら考えた。だが、すぐに気がついた。

「ああ、それがビルマのやり方なのですね」

「そうです」

お経が終わり、泣き崩れる遺族たちを知人たちが抱え、部屋を出ていく。ウ・テインリンさんは、棺に近寄り、封筒からその退会届を取り出した。そして、死者の前で読み上げ、棺の蓋をちょっと開けて中に入れた。