2010/03/18

チン民族の公正なる特産品(5)

チン民族記念日のメッセージとして、会長のタンさんのことばかり書くのは、おかしいかもしれない。だが、タンさんがぼくにアドバイスしてくれたあの夜にぼくが彼の言葉から受け取った公正という印象こそ、彼が率いるCNC-Japanのみならず、チン民族全体にふさわしいものはないのだ。

チン民族の人が繰り返し言うのは、チン民族の故郷であるチン州には「なにもない」ということだ。もちろんチンの人々にとってはかけがえのない土地であるからまったく「なにもない」わけではないだろうが、ヤンゴンやマンダレーといった華やかな都、肥沃なデルタ地帯、資源豊かなカチン州などに比べればそういわざるをえないのだ。あるカチン人がチン州に関するチン人の言葉を要約してこんなふうに通訳してくれた。「崖しかない」と。

そんな乏しい土地に暮らすチン人だからこそ、公正という言葉は特別な意味を持つ。他の州と同じように、チン州に大学を作ってほしい、特別な資源がなくても他の州と同じようにちゃんとした道路を造ってほしい、チン人がビルマ民族ではなく仏教徒でもないという理由で差別しないでほしい、ビルマ中央部の一部の人々が享受しているような、人間的なまともな生活を保障してほしい……。チン民族の政治目標は、自分たちをビルマ連邦の一員として公正に扱ってほしい、それにつきるようにも思う。チン人は公正に飢えている。