あるカチン人が難民と認められず、妻と二人の幼児を残して収容された。妻は大急ぎで日本人の身元保証人を見つけて、夫の仮放免許可申請を出した。
認められないからといって帰国することはできない。だから、もう一度申請するための準備を妻は進めていて、その際に手伝ってほしいと、ぼくに頼んできた。そこで、ぼくはこんな助言をした。
「再申請するのなら、焦ってしてはいけない。ちゃんと夫が釈放されてから二人で話し合ってしっかり準備した方がいい」
これに彼女は納得してくれたようだったが、ある日大慌てで電話をかけてきた。
「再申請を出さなければ、夫は釈放されない、と入管にいわれました!」
本当にそんなことがあるのかと思ったが、そう言われたのなら仕方がない。この電話がかかってきたのが月曜日だったので、「では木曜日に再申請の打ち合わせをしよう」とぼくは約束した。
だが、この約束は果たされることはなかった。なぜなら、その木曜日に、彼女の夫は釈放されたのだから。
おそらく彼女に再申請を急かしたのは難民審査を担当する部門だと思うが、どういう意図があってこんなデマカセを言ったのかはわからない。ただ再申請を早く出させたかったので嘘を言ったのかもしれないし、あるいはただ単に本当にそう思っていたのかもしれない。
いずれにせよ、仮放免を扱うのは別の部署の仕事である。これこそウ・ミンガラーの指摘する縦割り行政の弊害であり、われわれはささやかながらそれに振り回された、というわけだ。
参照:U MINGALARのつぶやき (256)難民認定申請中の逮捕