ビルマの国境地帯でよくいわれるのが、ホワイト・エリア、グレー・エリア、ブラック・エリアという3区分だ。
ホワイト・エリアとは、戦争のない地域、ブラック・エリアとはビルマ軍と非ビルマ民族軍の交戦地域、グレー・エリアとはその中間をさす。
ビルマではホワイト・エリア以外まず外国人は訪れることはできない。また、ホワイト・エリア、つまりヤンゴンやマンダレーの大都市の住民たちも訪れることはない。
ブラック・エリアのうち、最大のものがタイ・ビルマ国境に位置するカレン州で、カレン人を激しく弾圧するビルマ軍に対してカレン民族同盟(KNU)とカレン民族解放軍(KNLA)が粘り強く抵抗を続けている地域だ。
タイ・ビルマ国境で、あるカレン人の活動家と話していたときのことだ。カレン州の地図を前にして、彼はカレン人国内避難民の急増について訴えていた。
あまりの惨状に驚きながら、ぼくは地図を指して、何の気なしに言った。「すると、ここ全部がブラック・エリアというわけだな」
すると、そのカレン人、何を抜かすという顔つきで「ブラック・エリア? 俺たちから見れば、KNU統治地域こそホワイト・エリアで、それ以外はみんなブラックさ」