ほとんどのカレン人の母語はカレン語(のうちのどれか)であるから、生育環境によっては、ビルマ語がそれほど得意でないものもいる。
いや、ビルマ語が話されている環境で育ったとしても、ビルマ民族に対する嫌悪感・恐怖感から、ビルマ語の習得に熱心でない人もいる。
その背景にはビルマ人によるカレン人への迫害がある。その熾烈さ、残虐さはもはや民族絶滅作戦といっても良い程度にも達している。
あるカレン人が日本で難民認定申請を行い、ビルマ語で申請書を提出した。
もちろんのこと、彼は自分が難民となった背景として、「ビルマ軍事政権がカレン人を大量虐殺している」ことに触れずにはいなかった。だが、ビルマ語があまり上手ではない彼は「大量虐殺」をビルマ語でなんというか知らなかったのだ。
彼がどれくらい頭を悩ませたかは知らない。ともあれ「ルータップエー」、結局彼はそう申請書に書いた。文字通り訳せば「人・殺し・祭」と。