2016/01/09

ネーピードーの虹(ビルマ政治観光旅行) 序言

「ネーピードーの虹」は、2015年10月1日から18日までのビルマ観光旅行を書くシリーズで、大きく分けて3つの出来事が含まれている。ひとつはエーヤーワディ・デルタの町、ミャウンミャで、総選挙に立候補したカレン人の選挙運動に同行した時のことだ。これはあらかじめ大まかに予定されていたことであったが、二つ目のヤンゴンでの政治囚との面会は、到着した時点ではできるかどうか不明であった。そして、ほとんどその直前まで予期していなかったのが、ネーピードーで開催された全土停戦合意(NCA)の署名式典にチン人の代表団の一員として参加した出来事であり、これが三つ目のものとなる。

わたしは普通の観光客であるから、これらの経験はいわば観光コースと言っても間違いではなかろうが、このコースには特異な部分があり、それらは記録するに値するものだ。また観光コースなどにやって来ないジャーナリストにはまったく役に立たないことだろうが、ビルマという国に関心のある一般のツーリストには有益な情報も含んでいると思う。

とはいえ、わたしの関心は政治的問題や非ビルマ民族の政治活動にあるので、わたしの観光コースは結局そうした政治的観光地巡りとなってしまった。「ビルマ政治観光旅行」と副題をつけた所以である。

そもそも政治とは社会全体にかかわるものであるから、このコースに登場する人々も多様だ。政治囚もいれば、大統領もいる。ジャングルの武装勢力の議長もいれば、ヤンゴンのホームレスもいる。民族について言えば、カレン民族、チン民族、ビルマ民族、カチン民族のほか、インド系の政治活動家も姿を現す。若い娘も出てくれば、ヨボヨボの老人も出てくる。あらかじめ言っておけば、多いのは後者だ。

訪れた場所もさまざまだ。辺境の小都市から荘厳な首都、貧しい村落から賑やかな大都市、独房のごとき寝室から宮殿の一室、泥だらけの小型車からVIP専用大型バス、地方裁判所から国家の中枢……わたしはいわばビルマの社会の両端を行き来したのであり、その意味では「ネーピードーの虹」は社会全体の観光の記録である。ゆえに、これを読む者は、ビルマという社会のかなり広い領域をわたしと共に遍歴することとなろう。