2013/07/31

カチン独立軍(KIA)の病院(5)

さて,一番端にあるベッドは薄い板で仕切られていて,そこには見るからに衰弱し切った兵士が寝かされていた。

やせ細ってあばらが浮き出ている。顔の肉は削げ,そのせいで歯がむき出しになっている。
そして,彼の目だが,ベッドの脇で写真やビデオを撮るわたしも,日本からやってきたカチン人の女性が涙を流しながら祈る姿も捉える力がないかと思われるほど,うつろであった。

彼にもまた開腹手術の跡があった。だから,銃で撃たれたか,砲弾の破片が食い込んだのだ。骨と皮ばかりの腕には点滴の針が刺さっている。左の大腿部にも包帯が巻かれており,そこにも傷があるようだった。

 

年齢は,20代後半から30代前半というところで,いずれにせよまだ若いこの兵士は,誰にも分からない苦しみにじっと耐えているのだった。わたしは彼が死にかけており,それゆえ,この「特別個室」が充てがわれているのだと思ったが,その通りかどうかは分からない。