2013/07/12

カチン独立軍(KIA)の病院(2)

遺体は病院に隣接する建物の部屋に安置されていた。そこにはほとんどベッドしかなく,ガランとして,まるで何かの廟のようだった。数名の女性と軍服を来た人が若い死者を見守っていた。わたしたちの来訪は,女性たちの悲しみを高ぶらせた。

2人の在日カチン人女性も泣き出した。わたしがビデオ撮影を始めると,1人の女性がカチン語で何か死者に語りかけはじめた。涙を流しながら,哀切きわまりない様子で,映画の1シーンにありそうな感じだ。わたしも少し熱心になる。

 外から見たKIA病院

死んだ兵士は軍帽と軍服姿で,赤いカチンの旗をかけられて眠っていた。枕が二つ重ねられていたのは,包帯を巻いた頭から滲み出る血がベッドを汚さないようにとの配慮からだろう。頭に接した部分には赤黒く染みができていた。顔には苦悶の表情も傷もなく,少し開いた口からは白い歯が覗いていた。胸元に紙幣が重ねられ,さらに腹の上当たりに草の束が置かれていた。どのような植物で何のためかは分からないが,その濃い緑は旗の赤い生地と,交叉する白い剣の図像と調和し,いかにもカチン民族らしい様式を死に与えていた。


カチンに限らず,どの民族も,どの文化も,死者に何か纏わせたがる。そして,死者がその着心地について文句を言うことは滅多にない。