2015/06/12

入管エレジー [18日目]

品川に収容されているビルマ難民のために出していた仮放免許可が下りた。

毎度のことながら、何で許可されたのか分からない。この人は3度目の申請で通ったのだが、不許可だった2回と今回の申請の内容はほとんど変わらない。

要するにわたしがどんな申請をしようと、入管が出そうと判断しなければ、通らないのだ。

かつてわたしは、仮放免許可申請理由書をしたためるのに文才の限りを費やしたものだった。被収容者の悲しみと苦しみをあたかも一編のエレジーに仕立てあげ切々とうたいあげたのだ。おお、その哀切な言葉たちは鬼神をして慟哭せしむるほどだった。

ただ残念ながら、これが入管にまったく効き目がなかった。ホント。

てなわけで、わたしはもうそんなことはしない。

理由書のひな形を作っておいて、要請があるたびに名前を入れて、はい出来上がりだ(心身に異常のある場合だけその旨付け加える)。

きっと入管だって読みゃしない。書類が揃ってりゃいいのだ。理由書に書いてあるのがふわとろオムレツの作り方だったって、出すときゃ出すだろう。

ローマの詩人、オウィディウスは、配流の地で書きつづったその哀歌でもって、皇帝アウグストゥスの怒りを解き、ローマへの帰還を果たそうとしたが、結局、客死を免れえなかった。オウィディウスほどの詩人でさえこうなのだから、わたしごときのエレジーが効き目を発揮しなかったとしても無理はないのである。

品川入管の面会待合室行きのエレベーター。