2015/05/19

寒山拾得 [2日目]

財布を拾ったどうしよう、と知り合いのあるビルマ難民から電話がかかってきた。

そのまま警察に届ければいいと思うのだが、そう簡単には行かない。

彼は難民認定申請中の仮放免の身で、就労許可はない。しかし、難民認定申請中の人を経済的に支える仕組みは国には(ほとんど)ないから、仕方なく働かなくてはならない。昔は入管もこうした労働を取り締まろうとしていたが、今は見て見ぬふりしている(そして入管のこうした態度がいわゆる「偽装難民」を誘発している)。

で、彼が財布を拾ったのは仕事帰りだ。警察に届け出て、いろいろ聞かれて「不法就労」(いや入管の態度からいえば不問労働だが)をつつかれると心配だ。で、わたしのところに電話をかけてきた。

翌日、事務所にやって来ると彼は言った。「いや、もうこれで財布を拾うのは3度目なんですよ!」

わたしもあやかりたい!

それはともかく前の2回は職場の友人が警察に連絡してくれたらしい。

財布を開くと職場の名刺が出てきた。そこに電話をかけて事情を告げると、本人は休みだが、連絡をしてくれるとのこと。

「きっと心配で今ごろ探し回ってるんじゃないですか」と彼。

しばらく待っていると落とし主から電話がかかってきた。

わたしたちは駅で待ち合わせ、無事に返却することができた。飲んだ帰りに落としたのだそうだ。

落とし主は5000円をお礼として彼に渡した。わたしも500円ぐらい分けてもらえるかもと思ったがそれはなかった。


「彼ら(移民)は犯罪率を上げる!」
というが、ほとんどの移民は犯罪と汚職を避けるし、
送還されでもしたらと思うと
恐くて犯罪になんかかかわっていられない。

「む……あの財布には送還されてもいいぐらいの
金が詰まってるのかね……んなわけない」

結果として犯罪率についていえば、
アメリカ生まれのアメリカ市民より
不法滞在者のほうが低いということになる。
(Peter Bagge, "Everybody is Stupid Except for Me" p117)