2012/03/30

失われるべき10年 and more

先日、在日チン民族協会(CNC-Japan)主催の無国籍問題のワークショップについて書いたが、日本国籍取得(帰化)の話題も出た。どうしてこれが問題になるかというと、それが無国籍の子どもが国籍を取得する手段のひとつだから。

もちろん、日本国籍取得というのは容易ではない。日本人と結婚した外国人ですら苦労させられると聞くから、オーバーステイの後に難民認定申請し在留を認められた人にとってはさらに難しそうだ。

難しそうだというのは、実際例がないためだ。いや、ビルマ難民で帰化したという人はいる。だが、それはあくまでも噂のようなもので、実際に名乗り出ている人はいないともいう。これにはいろいろな理由が考えられるが、ま、要するに数が非常に少ないということだろう。

それはともかく、ワークショップでチン民族のある男性が話してくれたのだが、帰化申請のため法務省の窓口に行ったとき、こんな風に言われたそうだ。

「あなたの場合は、10年経ったらきてください」

この「10年」で会場は盛り上がった。これはオーバーステイを埋め合わせるものなのか? それとも難民は誰でも10年待たなくてはならないのか? そして、その年数は法的に何を根拠としているのか? 人々の疑問はこうしたものであったが、わたしを含めて誰にもこれに答えられるものはいなかった。

「ひょっとして対応に出た職員が意地悪な人だったのかもしれないよ。10年といえば、すごすご引き下がるかと思ってさ」と誰かが言う。

わたしはひそかに思う。「しかし、その法務省職員てのが実は一番やさしい人で、他なら20年のところを大負けに負けてくれてたりして……」