2012/05/07

アマゾネス(2)

カレン人の社会、文化の中で女性がどのような役割を果たしていて、それがカレン民族運動(戦争を含む)や、NGO運動の中でどのように変化しているか、あるいは今の女性のリーダーシップの歴史的経緯や、今後の可能性などを、国内のカレン人、KNU内のカレン人、難民キャンプのカレン人、外国のカレン人などのネットワークを踏まえつつ論ずるのは、非常に面白そうな研究だが、これはわたしのすることではないので、どうでもよろしい。

それはともかく、カレン人の女性について興味を感じたわたしは、いろいろと尋ね、2つの興味深いエピソードを聞くことができた。

そのうちのひとつは、現在、カレン州にある村の村長の多くが女性であるという話だ。

これらの村は、ビルマ軍とカレン軍の交戦地域にあり、しばしばビルマ軍が村を襲い、村人たちを強制荷役に駆り出したり、攻撃したりする(今はわからないが)。

このような状況で、村にやってきたビルマ軍との交渉にあたるのは村長の役目だが、その際に女性の村長が対応に出たほうが、男性が同じことをするよりも穏やかに事が進みやすいのだそうだ。

これはおそらく、ビルマ軍が村長であれなんであれあらゆるカレン人男性が潜在的にカレン軍兵士であるとみなしていることに関連しているのだろうと思われる(あまり人が言わないことだけれども、ビルマ軍は本当のところカレン人が怖くてたまらないのだ)。

これなどはビルマ軍への対応という外在的な理由からカレン人の女性のリーダーシップが必要とされるようになった事例といえるかもしれないが、元々カレン社会での女性の地位が高かったから、そのような解決策が選ばれたということもできる。

では、同じような状況に置かれている他の民族(シャン、カチンなど)ではどのような方策が取られているのか。 同じような解決策が取られているのか、それとも少なくとも女性が村長をするという選択肢はないということになるのかどうか、わたしには分からないけれど、こうしたことを細かく調べて比較したり、分析したりすれば、興味深い研究になるかもしれない。もっとも、これもわたしのすることではないが。

モヒンガーとApple

今日はBRSA(在日ビルマ難民たすけあいの会)の仲間たちと飲む(いつも飲んでるみたいだが)。

豆苗のサラダとレンコン入りモヒンガー(魚のだし汁の麺)をご馳走になる。

BRSAには名古屋支部があるが、今日は名古屋で水かけ祭りがあり、BRSA幹部がひとり東京から参加したとのこと。

NLD、LDB、BRSA名古屋支部などがお店を出したり、ビルマの楽団が演奏したりしたというが、今日の悪天候、特に昼過ぎの大雨のせいで、人出は少なかったそうだ(それでも一応は利益を上げたという)。

ところで、今日の飲み会の場所はBRSAの役員の女性の家で、ご主人はとてもAppleの製品に詳しい。iPhoneを見せたら、あっという間に初めて見るような機能(ホームボタンをタッチパネル上で代替するAssistiveTouchやバッテリーの減りを少なくする方法)を教えてくれた。「奥さんよりもAppleが好き」とみんなにいわれるだけある。

2012/05/05

アマゾネス(1)

またまた飲んでいるときの話で恐縮だが、飲み会のとき、あるカレンの男性に薮から棒にこんなことを聞かれた。

「奥さん強い?」

この俺に何をくだらんこと! わたしはせせら笑いながら即答する。「強いです」

「は! じゃあんた、カレン人だ!」

わたしの家庭の事情はともかく、カレン人の女性は強いのは確か。カレン人は日本人とは異なり、男性が家事や料理をするのは珍しくはない(もっとも、ビルマ人もけっこう男性が料理する)。

しかも、KNU(カレン民族同盟)といったカレン人の政治団体やNGOを見てきたわたしの経験からすれば、カレン人は女性のリーダーシップを重視しているといっていい。今のKNUの事務局長は女性だし、タイ国境で働くカレン人NGOでもたくさん女性が活躍している(その代表例がメータオ・クリニックのシンシア医師だ)。

しかし、だからといってカレン社会で男女平等が確立されているというわけではない。いかにKNUの代表のひとりが女性であるとはいえ、その幹部の大部分は男性だ。わたしは戦争のことはわからないが、カレン軍の兵士に女性がいるのは確かとしても、やはり実際の戦場では男性兵士のほうが多いに違いない。

2012/05/04

涙の理由

このエピソードは、1年ばかし前にあるビルマ難民が難民認定された時のものだけれども、本来ならばわたしではなく、当事者が書くべきものだ。

というのも、その人には、書くべきことを書くだけの十分な日本語能力が備わっているから。何をわたしがでしゃばることがあろうか。

とはいえ、あまり自分のことを得意気に吹聴しないのが、ビルマの人々。あるいはそのまま書かれずじまいなんてこともありうる。わたしが自分がふさわしからぬのを承知でその人の代わりに書くのは、ひとえにこれを恐れてのことだ。

もっとも話は単純だ。

入管に呼び出され、担当の職員から難民として認定されたと告げられた時、彼はどうにも泣かずにはいられなかったのだ。

うれし涙。確かにそうだ。自分が難民であることを訴える真面目な努力が実を結んだのだ。

だがそれだけではない。

難民認定に至るまでの苦労が思い出されて泣けた。確かにそうだ。これは入管に収容されたものにしかわからない。

だがそれだけではない。

予想だにしなかった。確かにそうだ。難民認定されるなんて、本人すら思いもよらなかった(わたしだってそうだった)。彼は政治団体を率いるリーダーでもなければ、誰もが知るような派手な活動家でもなかった。彼はただただ誠意をもって難民審査に立ち向かい、みごと勝利してみせたのだ。その感動が彼を泣かせた。

だがそれだけではない。

彼は、これらの喜び、感動を感じながらも、それと同じだけ悲しかったのだ。

「ああ、難民と認定された以上もう俺はビルマに帰ることはできない。もう家に戻ることはできないのだ。難民認定とともに故郷から切り離され、異国で一人で生きていかなくてはならないこの俺は今日からまったくの別の人間になってしまうのだ……」

彼は人目をはばからず泣いた。

しまいには入管の職員も心配して慰めようとする始末。

2012/05/03

ヘビとカバ

カレン人の抵抗組織、カレン民族同盟(KNU)とビルマ政府との交渉が本格的に始まりつつあった2月ごろのこと、飲み会であるカレンの人がこんなことを言っていた。

「いまみんなカレン人はジプシーになっちゃったよ。遊んで、アコーディオンやって、歌って、それだけ。女の子はソープランド。なんにも考えない。

イスラエルは強いよ。みんなにいじめられたけどがんばって、国作った。強い国作った。本に書いてある。わたし、しっかり読んだよ。

ビルマ軍がカレン人と停戦。でも、強いプロレスラーが子どもにby forceでサインさせようとしてるようなもの。これはほんとじゃない。

ビルマ人はヘビみたい。この前テレビ見たよ。ヘビがカバ飲み込んじゃった! カレン人は気をつけなきゃ」

別のカレン人が口をはさむ。「えっ? カバがヘビ飲み込んだの? どっち?」

「どっちだっけ・・・・・・」

もうグダグダ・・・・・・。

(ところで、ここであるカレン人が語る「ジプシー」とか「イスラエル」のイメージが完全な誤りであることはいうまでもない。)

2012/05/02

FRCS-Japan

カレンの人たちと飲んだ。

みんな酔っぱらって大声でしゃべることしゃべること。いや、怒鳴ってる。

「外国にいるビルマ出身者なんて、あれだ、3Dだ!」

「3D?」

「Dirty、Dangerous……後ひとつはなんだ?」

誰も分からない。「なんだっていい、3Dだ!」

黙って飲んでいたわたしは日本語の3Kすらアヤしいことに気がつく。汚い、危険、あとひとつはなんだっけ? こっそり携帯で調べだす。

「俺はビルマに帰ったら」と一番の年長者が話してる。 「会社を興すんだ! 名前はもう決まってる。FRCS-Japan! 俺はみんなに名乗るんだ。FRCS-Japanのものだ、てな!」

なんだ? そのFRCS-Japanてのは? やけにカッコいい社名じゃないか!

「そうさ! FRCS-JapanのFはFactory! FRCS-JapanのRはRestaurant! FRCS-JapanのCはConstruction! FRCS-JapanのSは……決まってるだろ! SOUJI(掃除)だ!」

日本での職業経験が全部詰まってた。

ちなみにもうひとつのDはDemeaning(不当に地位が低い)だとのこと。

2012/05/01

洗礼と教会

わたしはキリスト教徒じゃあないが、あれってキリスト教的にはいいのかね。

「ダルビッシュ、メジャーの洗礼」って。

洗礼ってのはそんなに厳しいもんなのかね。

「ナザレのイエス、ヨルダン川できつーい洗礼」とは福音書には書いてなかった(ような気がする)。

ま、どうでもいいんだが。

ところで、在日カレン人の集まる教会ってのが、10年以上前からあって、要町の教会を借りてるんだな。

でまた、別のカレン人たちがいて、去年ぐらいからかな、 そのうちのひとりの家に集まって、礼拝をしてたんだ。月一回、最後の日曜日に。

わたしはその礼拝には行ったことはないが、その家にはよく行くので、部屋の片隅にビルマ語の賛美歌の本とか積まれているのには注目してた。また、礼拝の後はみんなで食事をする決まり、で、わたしが行ったときにその残りがあると、ごちそうになってたりしてた。

そんでだ、昨日のこと、その家の主が、わたしに言ったんだな。

「今月から、駒込の教会を借りて礼拝をすることになりましたよ!」

わたしはキリスト教徒じゃあないが、こゆのはうれしい。