引き続き、ビルマ(ミャンマー)と日本を舞台にした難民の家族の映画、『Passage of Life』の撮影の話。
ガヤの録音の後しばらくして、昼飯時のシーンの撮影に入った。
監督がカメラマンと相談しながら撮影プランを練っている。
エキストラはいくつかの卓に別れて座らされるが、なにかの都合で入れ替えられたりする。わたしと藤由さんの座っているところは入り口に近い窓際の小上がりで、はじっこのほうだ。おそらくあまり映らないに違いないと油断していたら、 監督がわたしたちの席に注文する役をあてがった。
藤由さんがカツ定食、わたしがタン塩定食を頼む役だ。つまりセリフもある。
ここで思い出されるのが、映画『ブレードランナー』のラストシーンでレプリカントのロイ・バッティが発するセリフに関する有名なエピソードだ。
もともとは別のセリフが用意されていたのだが、バッティ役のルトガー・ハウアーが準備したアドリブが採用されたのだという。
これが今では屈指の名ゼリフとして映画史に燦然と輝いている。
となると、わたしのアドリブが同様の運命をたどる可能性だって十分にあるといわねばなるまい。さあ演技開眼だ。
ただ、問題は「タン塩定食ください」にどれだけアドリブの余地があるか、だ。
結論から言えば、なかった。すぐに目は閉じられた。
ガヤの録音の後しばらくして、昼飯時のシーンの撮影に入った。
監督がカメラマンと相談しながら撮影プランを練っている。
エキストラはいくつかの卓に別れて座らされるが、なにかの都合で入れ替えられたりする。わたしと藤由さんの座っているところは入り口に近い窓際の小上がりで、はじっこのほうだ。おそらくあまり映らないに違いないと油断していたら、 監督がわたしたちの席に注文する役をあてがった。
藤由さんがカツ定食、わたしがタン塩定食を頼む役だ。つまりセリフもある。
ここで思い出されるのが、映画『ブレードランナー』のラストシーンでレプリカントのロイ・バッティが発するセリフに関する有名なエピソードだ。
もともとは別のセリフが用意されていたのだが、バッティ役のルトガー・ハウアーが準備したアドリブが採用されたのだという。
これが今では屈指の名ゼリフとして映画史に燦然と輝いている。
となると、わたしのアドリブが同様の運命をたどる可能性だって十分にあるといわねばなるまい。さあ演技開眼だ。
ただ、問題は「タン塩定食ください」にどれだけアドリブの余地があるか、だ。
結論から言えば、なかった。すぐに目は閉じられた。
打ち合わせする藤元監督たち。
《アウトテイク》
監督「本番!」
わたし「タン塩……定食……くっ、くださ……(ガクリと絶命)」
監督「こいつの命脈をカット!」