2013/12/05

特定秘密をお話しします

とある独裁国家で,反体制派が独裁者を「バカ!」と非難したら,秘密警察が現れてその男を逮捕した。

男が「何の罪で俺を逮捕するのだ!」というと,その秘密警察は答えて「国家秘密漏洩罪だ!」。

これはよく知られたジョークで,しかもどこの独裁国家にも当てはまる。

別のジョークに,レーニンの禿頭も「国家秘密だ!」としたソ連時代のものもあるが,この禿頭についていえば次のようなものもある。

「書記長! ソビエト連邦のポルノの解禁についてお伺いしたい」

書記長「確実に進んでいる! 同志レーニンは,すでに数回帽子をかぶらずに演説しているのだ」

これは『スターリン・ジョーク』(平井吉夫著)に出ている(ただしうろ覚え)。

それはさておき,わたしは特定秘密保護法は無駄な法律だと思っている。法律を作って,罰則を作ったからといって,秘密を守ることができるとは限らないからだ。

罰則を越える利益や,罰則を度外視させる義憤から「特定秘密」なるものを暴こうとする人はいくらでもいるだろうし,また不慮の事態というものもある。

しかもこの「特定秘密」そのものが何か分からないというのだから,そのうち「特定秘密」詐欺も横行するに違いない。

一人暮らしの老人の家に政府関係者と称する者から電話がかかってくる。

ニセ政府関係者「あなたの息子さんがはどうも特定秘密を漏洩しているようです」

ご老人「えっ,そんな! うちの子は間違っても安倍さんがバカとか言わないはずですじゃ!」

ニセ政府関係者「いえ,それは個人の秘密です(そっとしておいてあげましょう!)。息子さんが漏洩しているのは国家を危険に晒す特定秘密です」

ご老人「そんな秘密を息子が知るはずもありませんです。 そもそもどんな秘密を漏らしたというのでしょうか?」

ニセ政府関係者「それは言うことはできません! なにしろ特定なもので。とにかくこのままでは息子さんは刑務所行きです」

ご老人「おお! なんてこと! どうすればいいものやら!」

ニセ政府関係者「ご心配なされぬよう! 今ならまだ間に合います。チトお金がかかりますが!」

ご老人「いくらでも言ってくだされ! すぐに振込みますぞ!」

とこんな具合だ。しかも、国家そのものがこの「漏洩漏洩詐欺」を行う可能性だってあるのだから、とても安心してはいられない。

Facebookにわたしは先日冗談で「さてさて特定秘密でも暴露するか」と書いたところ、日本語のわかるビルマの人から「どんな特定秘密ですか?」とのコメントがあった。

わたしが「日本の安全を脅かすような特定秘密を話すと逮捕される法律が日本でできそうなのです」と説明すると、その人は「ビルマと同じだ」と返してくれたのだが、同じではやはり困るのである。

わたしは思うのだが、最高の秘密保護とは秘密を持たないこと以外にない。

そしてこの秘密という手段、古臭く剣呑な道具によらずしていかに国を発展させ平和を維持するか、頭を絞るのが、まともな政治というものだ。

いっぽう、特定秘密保護法はこうしたまともな政治とは真逆のもの、頭を絞らない怠け者の思いつきから生まれてきたものにすぎない。

そして、この法律が特定秘密として覆い隠してしまうのは、本当のところ、秘密なしでも安全は守れる方法はいくらでもある、という政治的真実なのだ。