2013/12/02

インセインとピーマン(4)

日本を去る年は大変だった。

働いてた店の日本人が金を貸してくれと言い出したのだ。36万。「子どもが交通事故で……」と! ついホロリと来てしまったというわけ。

ところが,いやはや,それっきり姿をくらました!

騙されたんだ。帰りの飛行機代もなくなった。それで2ヶ月ばかり働くはめに。

「そのことをあたしは(当時働いていた店の)部長に話したんだよ。そしたら部長が怒って『あなたバカね,なんでそんなヤツにお金貸したの?』って。そしてこうやって(自分の頭を指差して)『あなたの頭,ピィ〜マンね!』って言ったのよ! ああ,あたしはこの『ピィ〜マンね』が,もう絶対忘れられない!」

「なんだ,ピーマンって」と同行したカレン人。

「切ってごらん,空でしょ!」 大いに嘆きながら「ああ,ほんとに言ったのよ。『あなたの頭,ピィ〜〜マンね!』って!」

彼女は何度ものこの「ピィ〜マン」話を繰り返した。よっぽど悔しかったのだ。

大金を失ったこと,帰国が遅れたこと,長い労苦が悔しい出来事で締めくくられたこと,日本でのあらゆる思い出がこの「ピィ〜マン」にすべて凝縮されてしまった!

おそらく,わたしの顔もピーマンに見えたことだろう。

ピィ〜〜〜マン。

画像はインセインとは関係ありません。