在日ビルマ難民たすけあいの会(BRSA)のメンバーに,ビルマのお土産は何が良いか聞いたら,ためらいがちにパイエジョーなるものが食べたいと言う。
何かと尋ねると「日本語は分からないがこれは虫を炒めたものでビルマ人みんな大好きだ」という。
わたしは虫と聞いただけで「この土産却下」と秘かに思い,日本を発ったのであった。
ビルマにいたのは2週間で,結局このパイエジョーについてはまったく思い出さなかった。だが,最後の日に「空港に行くまで数時間余裕があるのでなにかしたいことあるか?」とその日行動をともにした有名な社会活動家のネーミョージン(Nay Myo Zin)さんに聞かれたとき,そいつは再び頭をもたげてきたのだった。
しかし,彼は,パイエジョーを土産にしたいという希望を聞くと,今の時期は難しいかな,とありがたい指摘。
そのおかげで,わたしは虫の炒め物を日本に持ち帰るという任務から解放されたのであった。
ところが,この間の日曜日,カレン人の家でみんなが飲んでいるところにお邪魔すると,このパイエジョーなるものが出てきた。大きなイナゴような虫の炒め物だ。
「これは宝だよ! さ,どうぞ!」
みんなよだれ垂らしてる。ほんとに大好物なんだ。
そんなお宝を滅相もない……とわたしが断ろうとすると,「韓国で働いていたとき殺したばかりの牛のレバーをそのまま食べさせられた」というエピソードが出てきた。
「文化の違いはきっと乗り越えられる!」という励ましだ。エールだ。これはもう断れない……。
というわけでわたしは2匹ほど食べた。カリカリに揚げてあった。しょうがで味付けするのだと言う。ま,わたしは川海老の素揚げのほうがいいかな……。
パイエジョー,正確にはパイッ(ပုရစ်,コオロギ)・チョー(炒め物)というらしい。もともとはマンダレー辺りで食べられていたものがビルマの他の地域に広がったとのこと。
もっとも,ビルマだけでなく,ラオスやタイでも当たり前の食材というから,起源に関するこの説はさらに検討を要する。
ヤンゴンでたまたま撮影していたもの。ピンボケだが。