2012/05/23

デヴィッド・ターカボウさんを囲む会(1)

デヴィッド・ターカボウさんはカレン民族同盟(KNU)の副議長(副大統領)だが、KNUの議長が高齢のため、実質的にはこのカレン人最大の政治組織のトップであると言ってもよい。そして、KNUというのは、たいていいつも非ビルマ民族の反政府団体では主要な役割を占めるから、彼はまたビルマ連邦主義運動の代表のひとりでもある(ビルマ連邦主義運動とは、ビルマ民主化運動と区別するためにここでは用いている。ビルマを民主化するためには非ビルマ民族の自己決定権の確立もまた重要だとする立場)。

要するに、今後のビルマの動きを考える上での最重要人物のひとりなのであるが、そのデヴィッドさんが、4月25日から5月4日にかけて、ビルマ連邦民族統合評議会(UNFC)の代表団のひとりとして日本の外務省の招きにより来日した。彼はUNFCでは副議長を務めている(ほかの代表はカチン民族とポオ民族の政治家。この2人については別に記す)。

今回の来日では、外務省をはじめとする日本政府、政治家との会談、外国人記者クラブでの記者会見、日本のテレビ局、新聞社などのインタビュー、在日ビルマ難民政治団体との対話集会、日本人向けの講演などのさまざまな活動のほか、富士山に登ったり、観光をしたりしたそうだ(日本政府は日本への旅行費と4日分だけの滞在費を支払ったという。残りの滞在費と交通費は在日ビルマ難民が負担しているとのこと)。

わたしはそのころいろいろ忙しくて、記者会見や集会などには行くことができなかったけれど、4月30日(祝日)に在日カレン人とデイヴィッドさんの交流会が開かれるというので、参加させてもらった。

もっとも、当初の予定では4月30日の夕方に開催されるはずだった。しかし、デヴィッドさんに急な用事が入ったとかいうことで、午後3時から午後6時までと変更になった。

日本人の中にはカレン軍に身を投じてビルマ軍と戦った人(中には命を落とした人)がいるが、そうした人々と急に会うことになったのだという。

そんなわけで、この日の集会を楽しみにしていた在日カレン人にも、仕事の都合で結局来れなくなった人もけっこういたようだ。そもそも、今回の来日そのものが急な話、しかも招聘主は日本政府、在日カレン人はもちろん蚊帳の外というわけで、みんなずいぶん振り回されていた。「もっと早く知っていればいろいろ計画できたのに!」とある人は憤慨していた。

要するに、在日カレン人にとってはまさにこれは貴重な機会だったのだ。カレン政治の中央にいる重要人物、ビルマ政府の最大の敵、ビルマ国内ではもちろんのこと日本でも会えるなどと夢にも思わない人物が、ほかならぬ日本政府の招きでやって来るなどと、誰が想像できようか。まったく、このわたしもデビッドさんと日本で会う日が来るなど(しかも池袋の居酒屋で!)思いもよらなかったのだ。