2012/05/29

臭い

日本に住んでいるチュニジア人にこんなことを言われた。

「はじめて日本に来たとき、醤油の臭いがダメだった」

日本に生まれた人にとっては醤油の臭いなど当たり前のもので、まず気にするようなものではないと思われるが、醤油の文化の外の人にとってはなかなか強烈なものなのだろう。

星野之宣の短編に、地球に住んでいる人間は地球が立てる音に気がつかない、というようなのがあったように思うが、それと同じだ。

この前カチンの人とご飯を食べていて、こんなことを言われて驚いた。

「日本に来たばかりのころは海の魚が臭くてどうしても食べられなかった」

カチンの人に限らず、ビルマの人は川魚を常食しているので、それに慣れた味覚からすると海の魚は臭うらしいのだ。

つまり、わたしを含む一部の日本人が「川魚は泥臭いからイヤだ」というのと対をなしているというわけだ。

カチンの人がいやだという海の魚の臭いはおそらくわれわれのいう「生臭さ」なのかもしれないが、それを確証するのはビルマの人々が日本で言う川魚の「泥臭さ」を理解するのと同じく難しいに違いない。

それに、われわれが「泥臭い」という臭いはおそらく「泥」とは関係ないのではないだろうか。また、おいしいウナギを食べたときに、いかにも川魚だなという臭いが不意にするときがあるがそれと関係がありそうな気もする。

いずれにせよ、日本とビルマとの間に横たわる臭いのギャップを埋めるためには、ウナギ(特上・2段重ね)を食べる必要がありそうだ。