もうひとつの話は、もしもカレン烈女伝があるとしたら、エントリー間違いなしの女性についてのものだ。
正確な年代については聞いてもなんだか分からなかったのだが、それでも1947年のカレン革命以後というからそれほど昔ではない。
NAW THA LU SAE(ノウ・タールーセー)という女性がいて、ビルマ軍に捕らえられて、乳房を片方切り取られるという拷問を加えられた。
痛手を負いながらもビルマ軍から逃げ延びた彼女は、激しい復讐心を抱いてカレン軍に身を投ずるや、軍を率いてビルマ軍と戦い、敵に大きな打撃を与えたという。
その戦いぶりは超人的なもので、ビルマ軍の撃つ弾は決して彼女に当たらなかったと伝えられ、ビルマ軍兵士は彼女を「片乳(ノー《乳》タロウン《一個》セイン)」と呼んで恐れたという。
この伝承はもちろん、カレン語の女性名(ノウ・タールーセー)をビルマ語で解釈したため、つまりスゴーカレン人の女性の名前の前につける冠称のノウをビルマ語で《乳房》を意味するノウ、タールーをタロウン《一個》と付会したために生まれたに違いない(「セイン」は《ダイヤモンド》の意でビルマ語名によく用いられる)。
カレン語の名前の意味がはっきりしないので、この程度のことしか分からないが、いろいろと調べてみれば、とても楽しい時間が過ごせるはずだ。
ちなみに、古代ギリシアに出てくる、弓矢を打つために片方の乳房を切り落としていたという女性戦闘民族アマゾネスも、その名称をギリシア語で「乳なし」と解釈したために生まれた伝説だという。
アマゾネスというのはスキタイの民族集団だということで、これがカレン・ビルマの伝承、しかもごく最近の伝承とどう関係があるか分からない。ま、おそらくないだろうが、ノウ・タールーセー伝承というのが、もっと古い伝承の焼き直しだという可能性だってある。となるとカルロ・ギンズブルグの『闇の歴史—サバトの解読』が思い出され、話は全ユーラシアに広がることになる。
そして、こんなふうないかにも胡乱な珍説でも立証にはそれなりにたくさんの本が必要で、てことは結局儲かるのはアマゾンさんというわけ。
正確な年代については聞いてもなんだか分からなかったのだが、それでも1947年のカレン革命以後というからそれほど昔ではない。
NAW THA LU SAE(ノウ・タールーセー)という女性がいて、ビルマ軍に捕らえられて、乳房を片方切り取られるという拷問を加えられた。
痛手を負いながらもビルマ軍から逃げ延びた彼女は、激しい復讐心を抱いてカレン軍に身を投ずるや、軍を率いてビルマ軍と戦い、敵に大きな打撃を与えたという。
その戦いぶりは超人的なもので、ビルマ軍の撃つ弾は決して彼女に当たらなかったと伝えられ、ビルマ軍兵士は彼女を「片乳(ノー《乳》タロウン《一個》セイン)」と呼んで恐れたという。
この伝承はもちろん、カレン語の女性名(ノウ・タールーセー)をビルマ語で解釈したため、つまりスゴーカレン人の女性の名前の前につける冠称のノウをビルマ語で《乳房》を意味するノウ、タールーをタロウン《一個》と付会したために生まれたに違いない(「セイン」は《ダイヤモンド》の意でビルマ語名によく用いられる)。
カレン語の名前の意味がはっきりしないので、この程度のことしか分からないが、いろいろと調べてみれば、とても楽しい時間が過ごせるはずだ。
ちなみに、古代ギリシアに出てくる、弓矢を打つために片方の乳房を切り落としていたという女性戦闘民族アマゾネスも、その名称をギリシア語で「乳なし」と解釈したために生まれた伝説だという。
アマゾネスというのはスキタイの民族集団だということで、これがカレン・ビルマの伝承、しかもごく最近の伝承とどう関係があるか分からない。ま、おそらくないだろうが、ノウ・タールーセー伝承というのが、もっと古い伝承の焼き直しだという可能性だってある。となるとカルロ・ギンズブルグの『闇の歴史—サバトの解読』が思い出され、話は全ユーラシアに広がることになる。
そして、こんなふうないかにも胡乱な珍説でも立証にはそれなりにたくさんの本が必要で、てことは結局儲かるのはアマゾンさんというわけ。