2016/01/22

死者の名前(2)

その死因についてはわたしは、自殺でも他殺でもないこと以外はわからない。昨日(21日)、警察から彼の遺留品が返されたというから、その死に関してはケリがついたのだろう。

彼のことをよく知る人は、ずいぶん前から体調が悪かったようだという。病院に早く連れて行ってあげればよかったとその人は悔やんでいたが、それはなかなかできることではなかった。難民認定申請中の彼には保険がなかったから。

無保険でも病院は診てくれる。支払いに関しても、分割払いなどで対処してくれることもある。だが、その交渉そのものに非常なエネルギーが費やされる。ある程度の金銭的余裕か精神的余裕がなければ無保険者は病院には行けないのだ。

もっとも、彼が難民として認められて、十分に医療を受けていたら死ななかったかというと、わたしには何とも言えない。

というのも保険があったとしても飲酒が止められるとは限らないから。

わたしには彼がアルコール依存であったかどうかは判断できないが、仮放免延長のため、身元保証人の署名をもらいに数ヶ月ごとにやってくる彼には酒の匂い、そして酒を隠れ家とする人がしばしば見せる気弱な感じがまとわりついていた。

身元保証している別の難民がくれたお酒