ヤンゴンに二人の小学生の男の子がいる。
二人とも日本の保育園と小学校で学んでいたが、ある事情により、ヤンゴンに戻ることになった。カレン民族の家庭なので、ビルマ民族の多い公立学校はどうも好きになれない。そこで、ヤンゴンの日本人小学校に通わせることにした。幸いにも学校も理解があって二人を受け入れてくれた。
去年の二月にビルマに行ったとき、わたしは子どもたちの家を訪ね、母親と話をした。彼女が言うには、息子たちは自分のことを日本人だと思っているようで、大きくなったら軍隊に入って日本を守りたいなどと話しているという。
どうしてそんなことを言い出したかというと、小学校の授業である教師が「日本を悪い中国人がいじめている」というようなことを教えたそうで、それで中国人から日本を守らねばと幼心に決心したもののようだ。
これを聞いてわたしは複雑な気持ちを抱きながら立ち去ったのであった。
その訪問から数ヶ月して、わたしは再びヤンゴンに行き、件の小さい日本兵のいる家に立ち寄った。
子どもたちが「遊ぼう」というので、リビングで適当にあしらっていると、上の子がわたしに言った。
「ねえ、日本人は死ぬときは『天皇陛下バンザーイ』っていって死ぬんだよ!」
わたしはさらに複雑な気持ちでその家を後にしたのであった。
エーヤーワディ・デルタの村の保育所