入管での収容は無駄なことだと思うわたしが、この間、入管で目撃した無駄なことどもを紹介しよう。
東京入国管理局で面会の受付を済ませ、エレベーターで七階の待合所に上がり、呼び出されるのを待つ。
二人の男が後からやってくる。言葉は分からないが、ペルシア語かそれに似た感じの言語を話している。日本語も上手で、職員とのやり取りもそつがない。二人は面会相手に歯ブラシを差し入れしたいようだ。
入管では差し入れは直接渡すことはできず、面会の前に職員に託さなければならない。
その手続きをしていた男が、不意に日本語でいう。
「歯ブラシが欲しいんだってよ。歯もないのにさ……」
もう一つ。
相変わらず待合所で待っていると、面会を終えたばかりの日本人の男が出てくる。五十代の痩せた男で、調理場でてきぱき働いているのが似合う感じ、いずれにせよ、入管の面会に用のある職業ではない。
男は出てくるなり、職員を捉まえて話しかけた。かすかに震えるその声が、憂いと 苛立ちを押さえつける。
「あの……入っている人と私が入れ替わるなんてことはできないんですかね……」
二つ目終わり。
東京入国管理局で面会の受付を済ませ、エレベーターで七階の待合所に上がり、呼び出されるのを待つ。
二人の男が後からやってくる。言葉は分からないが、ペルシア語かそれに似た感じの言語を話している。日本語も上手で、職員とのやり取りもそつがない。二人は面会相手に歯ブラシを差し入れしたいようだ。
入管では差し入れは直接渡すことはできず、面会の前に職員に託さなければならない。
その手続きをしていた男が、不意に日本語でいう。
「歯ブラシが欲しいんだってよ。歯もないのにさ……」
もう一つ。
相変わらず待合所で待っていると、面会を終えたばかりの日本人の男が出てくる。五十代の痩せた男で、調理場でてきぱき働いているのが似合う感じ、いずれにせよ、入管の面会に用のある職業ではない。
男は出てくるなり、職員を捉まえて話しかけた。かすかに震えるその声が、憂いと 苛立ちを押さえつける。
「あの……入っている人と私が入れ替わるなんてことはできないんですかね……」
二つ目終わり。