2016/02/04

「我らが勝利の日:チン民族と全土停戦合意(NCA)」(10)

それゆえ、名称の問題からこの合意を捉えることは必ずしも生産的とは言えないのだが、一つ重要なことがある。全土ではないのに全土と称するこの不正確さが、非ビルマ民族のみならずすべてのビルマ国民に換気するあるイメージのことだ。それは軍事政権が繰り返し行ってきたゴマカシと詐術を人々に想起させるのであり、その点からいえばNCAとはまったくの羊頭狗肉に他ならない。しかし、これはビルマ政府に対する不信に関わる問題であり、後で扱うこととする。

いずれにせよ、そしてその背景にどんな理由があるにせよ、NCAは端的にいって「看板に偽りあり」であることは間違いないが、それはむしろ皮相的な批判に過ぎない。より重要な批判は、合意した政治団体が「一部」に過ぎぬゆえにこの合意は平和をもたらさないというものであろう。つまり「一部」が全体において何を意味しているかが問われているのである。次にこの点に関して議論しよう。

NCAの署名に参加したのは確かに一部である。上に挙げたNCCTの16の参加組織のうち、合意に署名したのは6組織にすぎない(シャン州復興評議会はNCCTに含まれていない)。すなわち、NCAは少数派による協定なのであり、大多数には平和をもたらさない、ゆえに協定の意味は非常に小さいということになる。だが、果たしてそうだろうか。